vsパラグアイ(CS)

ノックアウト方式のトーナメント戦。あの堅守・難敵のパラグアイ相手にPKまで行ったことが良いのか悪いのかは、パラグアイの今後にゆだねるとして。

試合内容自体は悪くなかった。つまり、良いわけではなかった。試合の入り方は良かったと思う。果敢に前から守備をして攻撃するという意識を見せた。それは良かった。でも、なんとなくだけど、リーグ戦の戦い方から頭が切り替わってないような、かなり慎重な試合運びに徹してしまった…というのが全体的な印象。

では、個々の感想を。

川島永嗣:GK
先に言っておくとPK戦はノーチャンスだったが、うっすらと「気負いすぎモード」だったかもしれない。どのキッカーも上手かった。試合の中では、いつも通りの信用抜群・安定感ばっちりの川島。再三の危ない場面も辛うじて凌ぎ続けた。ゴールキックやフィードも精度が高くなって、今の段階では最高の状態かもしれない。

駒野友一:DF
今回はスピードとテクニックに優れたアタッカーに1枚でさらされる回数が多く「穴」とまでは言いきれないものの、ピンチは駒野のサイドから発生していたような印象。とはいえ、後半の遅い時間〜延長にかけて攻撃参加できていたので、決して悪い出来ではない。PK失敗は本人が一番悔しいと思うので不問だが、なぜ彼が蹴ることになったのかは疑問。良い選手だと思うけど、ツキのある選手でもなく、何かを持っているという印象がないので、こういう重要な役割を任せる選手ではないと思っている。蹴る前にいやな予感がしたのが当たってしまった。

田中マルクス闘莉王:DF
守備面は問題なし。たいしたほころびもなく、パラグアイのしつこい守備を凌ぎきった。攻撃については「点を取る」ことに頭が行き過ぎて、後半終了間際のヘディングなどは、その象徴的なシーン(落ち着いているときは、あそこから折り返してくるはず)だったと思う。

中澤佑二:DF
闘莉王同様、守備面は問題なし。それどころか今日の守備陣の中では「中澤様々」といえる出来だったという印象があった。今までだと素早いステップで翻弄されて振り切られるようなところでも、しっかり対処していて良かったと思う。

長友佑都:DF
豊富な運動量と忠実な守備、プレーイングスペースの広さはこの試合も問題なし。しかしながら、やはりボールコントロールの技術、そして攻撃時の対人プレーでは、世界基準に届いていた…とは言い難かった。再三のチャンスを「モノ」に出来たら、もっと上のステージが見えてくるような気がする。

阿部勇樹:MF
この試合でも重要なキーマンとして、アンカーをつとめ、全く期待以上に仕事をしていたと考えるのだが…監督はそうは思わなかったようで、単純に運動量が鈍った段階で退くことになった。強いて言えば長友ばりのスタミナを要求したいのだけど…難しいか。

遠藤保仁:MF
ハブとしてはこれまで通り十二分に機能したものの、やはり守備時の実行力がいささか物足りない。走行距離に比べてターンオーバーの機会が目立たないのが良い例だと思う。負け試合ほど、ささいなことが目立つもので。

松井大輔:MF
調子は持続していたのだけど、グループリーグほどの輝きは見られず。ボールは収まっていたのだけど、効果的なプレーが出来たか…と言えばそう言い切れないところがあった。とはいえ、途中で下げるには惜しかった。

長谷部誠:MF
この試合では延長の時間帯でも前線から最終ラインまで顔を出していて、攻守の中核として運動量を発揮し、これまでの3試合より存在感があったと思う。それだけに敗戦が惜しい。

本田圭佑:FW
オランダ戦よりはずっとまともに機能した。パスはことごとく足元に納め、簡単にはたき、相手はファウルでリズムを崩すことにした…と見えるような働きをしていた。しかしながら、いざボールを持って前を向いたときの判断がこれまでに比べて格段に悪く、延長前にあきらめてもよかったかもしれない。もちろん、かなりの博打ではあるが。

大久保 嘉人:MF
この試合で唯1人だけ、その武器であるドリブルが完璧に通用していた。なぜ、松井も本田も手こずっていた守備陣をスルスルとすり抜けられたのか。水を得た魚のように生き生きとプレーしていたと思う。それだけに無得点で終わったのが惜しい。

中村憲剛:MF
フィジカルコンタクトに難のあるイメージが強く、ここで投入されて同機能するんだろう…変えるなら遠藤じゃないのか?と思ったが、かなりシンプルに通用していたので驚いた。ドリブルもパスも守備もアイディアも、スタメンに起用できるレベルではないかと。

岡崎 慎司:FW
うーん。この人じゃなかったなぁ…。後述するが、この人が入るタイミングで玉田、もしくは森本だったような気がする。結果論ではあるけど、岡崎は、岡崎なりによくやっていたと思う。残念ながら独力で突破できる選手ではないし、守る時間でもないし。

玉田 圭司:FW
岡崎の時間帯に入れられていたら納得感があった。期待通りチャンスを作ったけども、もっともっとエゴイスティックに、ボールを拾いまくっても良かったのではないだろうか。なんとなく、お客さん的な、妙な遠慮があったようにも見えたのがちょっと残念。

岡田武史:監督
スタメンを変えなかったことは◎。しかし、相変わらず選手交代のコンセプトがちっともわからん。日本は、いつになったら「選手交代で博打が打てる監督」が手に入るんだろうか。足の止まったパラグアイに対して、ガンガン走る選手を2枚入れたら、状況はもっと好転したんではないんだろうか…というのが悔やまれる。いやマジで、戦況を見てるのかと問いつめたい気分。…勝てたよなぁ。

残念ながら日本のW杯は終わったけども、ちゃんとした戦う意識の高い選手を選抜すればここまで戦えるんだ、というところがわかったので、その意味で良い大会であったと思う。しかし、オシム氏も言っていた「こんなに勝てる可能性の高い相手と戦える機会はそうそう訪れるものではない」というのには同意できる。チャンスを逃したなぁ…というのは本当にそう思う。残念。