vsオランダ(地上波/CS)

この試合の現実味のある希望的な結論は、どんなに無様でも「勝ち点1奪取」だろうというのは、「奇跡信奉者」を除けば同意してもらえる人は少なくないと思う。
という前提から現実の結果を見れば、いささか残念ではあるものの、最少失点差での敗戦は全く悪い結果とも言い難い。何しろ相手が悪すぎるわけで。

試合の全体的な流れは悪くなかったと思う。好き放題にやらせず、数的優位を保ってしつこく食い下がって守っていたので。

で、選手評。

川島永嗣:GK
失点の強烈なミドル(本人が言ってるんだからブレ球らしいんだけど…)に対しては、気合いが空回りしたようにも見えた。鋭く反応しすぎて、シュートコースを行き過ぎてしまった−つまり気負いすぎたように見えた。それ以外は、後半に危ない抜け出されたピンチを阻止するビッグプレーを1度披露するものの、失点後からペナルティエリアの守備範囲がいつもより狭かった。DFラインとそういう相談になっていたのかもしれないが、あまりにゴール前に張り付きすぎのような気もした。それ以外は全体的に、良くも悪くも普通の川島という感じ。

駒野友一:DF
W杯の準備期間以降、覚醒した感がある。今野には申し訳ないが、故障してくれたおかげで日本は、安定感のある、バランスの良いサイドバックを1人手に入れることが出来た。弱気なバックパスは完全になりを潜め、前向きに進むプレーが増えた。オランダの左サイドにエリアが入った時間、長友とサイドを代わったものの、腐ることなく左の守備を淡々とこなす姿勢も良かった。

田中マルクス闘莉王:DF
制空権は五分五分。このレベルでも普通にやれることを改めて印象づけた。前節自重していた攻撃参加が解禁されたのか、パワープレーになる前から前線へ顔を出す「いつものプレー」を披露。失点の原因になったクリアはあるものの、全体的にはこの人にしては普通。ただし、相手関係を考えると「よくやった」という評価にもなるかもしれない。

中澤佑二:DF
失点シーンではボールに鋭く寄せるものの、世界一のクラブを率いる名手の鋭いミドルを止めるに至らず。しかしながら「完全復活」と言い切ってよい安定感を披露し、それ以上の加点を許さなかったのは良かった。ただ、1人でこのレベルのアタッカーを無条件で食い止められるレベルでもなく、残念ながらここが限界点かもしれない。

長友佑都:DF
守備にも攻撃にも顔を出す運動量は相変わらず。いっそ両サイドが長友だったら、日本はもう少し楽に戦えたかもしれない。後半、エリア投入時に駒野とサイドを入れ替えたことからもわかるとおり、指揮官からも絶大な信頼感を勝ち得ている。終了間際にデ・ヨングに転ばされたプレーは、審判によってはPKゲットとなるようなきわどいプレーだった。(もちろん「転ばされた」と書いたとおり、あれはファウルだと思うが)

阿部勇樹:MF
中盤の王様は今やこの人かもしれない。王様が言い過ぎなら、中盤のリーダー。この試合ではさすがに攻撃まで手が回りきらなかったものの、守備で貢献。海外の一流選手たちとの戦い慣れれば、まだ成長する余地はあるかもしれない。

遠藤保仁:MF
この試合でも積極的に守備を行い、パスを的確にさばいて貢献。今回じっくりと見て物足りないなぁ…と思った理由は「攻撃を操っている」という感じがないこと。瞬間的に好機や隙を演出する機会は多いのだけど。後半に中村俊輔が投入されてから、ポジションがかぶったりして、リズムの悪くなった時間があったのはややもったいなかったが、それは遠藤のせいというよりベンチワークのせいではある。

松井大輔:MF
この試合でもキレは健在。時折見せるトラップの雑さが無ければなぁ…という残念さも健在。つまり、綺麗に放ってみせたミドルシュートも、もっと楽にコースが狙えていたかもしれない。結局、松井にとってのビッグチャンスはあれだけだったのだから。運動量の落ちた時間で退いたが、この試合に限って言えば残した方が良かったかもしれない。やはり、外国人相手の間合いがよくわかっている選手は最後まで頼りになると思うのだが。

長谷部誠:MF
監督にペース配分を考えなくてよい、と言われているのか、今回も途中でお役ご免。目立って息切れしているようには見えないが、下げられちゃうんだなぁ…。どう考えても、欧州で慣れてる人は残した方が相手も嫌がるんじゃないかと思うんだけど、あのメガネの指揮官はそういう発想はない模様。

本田圭佑:FW
今日の1トップはさすがに無理があったか。オランダ選手と五分で競り合う強さは頼もしいものの、効果的な攻撃への展開はほとんど無かった印象がある。後半、目に見えて運動量が落ちたので今日は代えても良かったのではないだろうかと思うのだが…あの人のメガネには何かが見えていたのかもしれない

大久保 嘉人:MF
この試合は攻撃重視だったのか、ゴリゴリとドリブルで突き進みシーンが目立った。そのままシュートで終わった場面もあり、前節の鬱憤を晴らすかのような活発さが印象的。大久保のクイックネスで切り込まれると、さすがに転ばされる他無いのはわかるのだけど、無用なアピールが多すぎるという悪い癖が出たのが残念。焦らず、淡々とプレーしてほしかった。調子はすこぶるよさそうなので、精神的に落ち着いた状態で望めれば、次は期待できるかもしれない。

中村俊輔:MF
運動量の落ちた松井に代わって出場。が、一言で言えば、やっぱり要らない選手。もう終わっている。なぜ走ってスペースを自分で見つけてパスをもらおうとしない?なぜ簡単にボールをロストした上に守備をタラタラしてる?なぜせっかく受けたボールをコネたあげくに、何の意味もないつなぎで逃げてごまかす?本当に役立ってないし、自分に期待された仕事が全く理解できていない。

岡崎 慎司:FW
この試合でも残り時間が少なくなってからの登場だったにもかかわらず、決定機に飛び込んでくる勘の良さはあるものの、やはり「なんだかんだで得点する」のような、ある意味神頼み的な点取り屋にはなれず。ここでも決めていたら、間違いなく頼れるストライカーとして不動の地位を築けると思うのだけど。

玉田 圭司:FW
完治してないんじゃないのかなぁ。足の怪我。「らしさ」は少し出ていたが、いつも見せるような、張り切った、キリキリとつっこんでいくドリブルはほぼ無し。良いところもほとんどなくタイムアップ。明らかに物足りなかった。


岡田武史:監督
先発を代えなかったことは評価したい一方、ベンチワークはイメージがちぐはぐで良くなかった。中村俊輔を入れるなら同タイプの遠藤を外すべき(受け手を減らしてパサーが増えても意味ない。お互いに使いあう関係にもない)だし、岡崎を入れるくらいなら、競り合いに強く、シュートまで強引にいける森本の方が良かったし、怪我をかかえた玉田を入れるくらいなら、高さがあって走り回れる矢野で良かった。どうせ闘莉王をあげてパワープレーしたんだし。そして、運動量が激減した本田を外せなかったところも、柔軟性に欠けてるとしか言いようがない。どうにも動き方が悪くて損をしたという印象がぬぐえない。まぁ、最大のミスは中村俊輔を使ったことなんだが。


というわけで、永遠に詰めようのない1点差(だと思う…)で完敗を喫した日本は、次を最低でも引き分け以上で終えなくてはならなくなった。オランダよりは下ではあるが、明らかに格上でデカイ相手。どう戦うんでしょうか。ここまでの2試合とも、些細なことを除いて比較的満足な内容と結果で来ているので、ぜひトーナメントへ向かってほしいところではある。