vs スウェーデン

正確には 12 日の深夜になるんですが、11 日のスウェーデン戦。下馬評はスウェーデン有利。当たり前ですね。 W 杯準優勝ですから。ユニフォームは双方アウェー(日本は白白、スウェーデンは青青)のユニフォームで入場。結果は荒川の泥臭いゴールで五輪初勝利。ではそれぞれ行ってみましょう。

山郷のぞみ:GK
後半終了間際に CK を 1 つかぶった以外は、至って安定。仕事のほとんどは、堅いディフェンスラインからこぼれたボールをノープレッシャーで拾うことか、さほど驚異の無い遠目のシュートを捕球するくらい。当然、ただ突っ立っていたわけではなく、声はよく出していた。
山岸靖代:DF
ほとんど守備面が期待できない小林の裏で、もっとも割を喰った人だが、宮本、磯崎とのトリオでなんとかこらえる。後半ラスト 5 分とロスタイムは、早いボール回しからかなり押し込まれるが、ほとんどシュートまで持って行かせずにこらえた。
磯崎浩美:DF
さほど高さでやられる場面もなく、後追いになるような突破を許したわけでもなく、結果としてはほぼパーフェクトに持ち場を守った。強いサイドと評判のあったスウェーデンの右サイドと対峙したが、山岸、宮本とのチームできちっと対応。ラインコントロールを担当したが、オフサイドトラップをはっきり使ったのは 1 度だけ。ラインにこだわることなく「深さ」を作って攻撃に対応していたようだ。
下小鶴綾:DF
下馬評では弱いと言われていたスウェーデン左サイド寄りのセンターバックではあったが、攻め込まれた回数は少なくなく、広い守備範囲で攻め上がる川上の裏まできちっとカバー。中でも身体を張って相手を自由にさせず、ほとんど決定機を与えなかった。
川上直子:DF
さすがに相手が大柄なこともあって、得意の、相手の逆を通してかわすドリブルは成功せず、1 枚で取り返すのも難しかったが、いつも通りの運動量で攻守に貢献。 FK のチャンスも小林とサインプレーを決めるなど、好調を維持しているようだ。 FW にパスを入れるタイミングがちょっと早く、前半はあまり効果的な起点ではなかった。後半に入って相手の運動量が落ちた頃に、持ち前のスタミナを発揮してカウンターをつみ取る「寄せ役」として動き回った。
酒井與惠:MF
前哨戦で何度も見せた軽快で正確なパスワークは、相手が世界 2 位でも通用していた。この試合では、アウトサイドの高い位置まで進出したり、下がるディフェンスラインに対してどんどんドリブルで突っかけるなど、攻撃面でも目立った働き。
宮本ともみ:MF
ディフェンスの上手くない小林の後ろで、強力なアタッカーと対峙し、ディフェンスの山岸とのコンビで何度もカウンターをしのぐ。抜群のスピードがあるわけではないので、振り切られると辛いが、山岸、磯崎らとのチームでほとんどの攻撃をストップ。接近してのディフェンスでは身体を張ってたえた。
小林弥生:MF
守備面ではほとんど期待できないものの、今日はそれを補って余りある攻撃での貢献。 FK のサインプレーを始め、サイドチェンジの起点となるスクエアのパスをほとんどノーミスで通していた他、澤に決定的なスルーパスを通すなど、後半で交代するまで左サイドで存在感を示す。一方、前を向いてドリブルをする機会はほとんどなく、不満が残る。
澤穂希:FW
奇跡の復帰といって良いスピードで最終合宿からピッチへ戻ってきた。試合のプレッシャーの中でのボールコントロールは、手術前から比べるとやや本調子ではなさそうなのは、決定機を数度逸していたことからもうかがえる。逆に言えば、決定機に顔を出せるポジショニングの良さは鈍っていないということで、あのボールコントロールが戻ってくれば、必ず得点が期待できる。スライディングも厭わない守備の貢献も含め、鉄人と呼ぶに相応しい。
荒川恵理子:FW
貴重な先制点にして決勝点をマーク。前半の立ち上がりこそ、スウェーデン守備陣に手間取っていたが、徐々に持ち味を生かしてするすると前を向き始める。自分に入ってきたボールのほとんどを失わず、日本が攻め上がるための重要な起点として、大活躍といって良い働き。ポストよし、ターンよし、ドリブルよし、と、世界レベルで通用することを見せつけた。ただ、その後の決定機を外し、パスとシュートの選択を誤るといった場面がいくつかあったのが残念。後半、戦術面の理由からお役ご免になるまで文句なしの存在感。
大谷未央:FW
この試合は得点ではなくアシストに回ったが、いつもの「荒川−大谷」のホットライン健在。大柄なディフェンダーにかなり苦労したものの、素早さとテクニックを生かして攻撃を支えた。身体の張り方は上手く「大谷にくさびを打てばもれなく FK が付いてくる」といっても良いくらい潰されながらも、軽快なポストプレーも披露して澤らへ決定機を演出するなど、主に起点として貢献していた。
安藤梢:MF
交代出場するも柳田との交代で下がる。これは単純に上田監督のミスチョイス。守備が心許なくなったため、小林の代わりに左アウトサイドで起用されたが、右利きでセンタープレーヤーの安藤に左サイドでのプレーは難しかったようで、守備が上手いわけではないので事態好転せず。ちょっと戸惑いつつもできることはしていた感じ。今度はセンターで見たい。
丸山桂里奈:FW
荒川と交代で出場。荒川ほどの力強さはないものの、身体の器用なさばき方とテクニックの高さで相手のフィジカルコンタクトをいなす。どこまで通用するか楽しみだったが、縦へ、前への突破を繰り出していた。相手の足が止まった時間帯ではあったが、技術の高さはきちっとアピールできていたと思う。
柳田美幸:MF
機能しなかった安藤に変わって交代出場。左利きでテクニックがあるので、左タッチライン沿いできちっと貢献。小林、安藤に比べてボール際も強く、上田監督の意図に最も近い人選。何度か裏をやられていたが、中から振られてのことが多いのでほとんどは柳田個人の落ち度ということではない。
上田栄治*1:Coach
役割分担の明確化、オートマティズムの徹底浸透、各選手のバックアップ関係、各マスコミから伝え聞くハードなフィジカルトレーニングと、堅実な準備を積み重ねて闘えるチームを作り上げてきた手腕が今日の勝利のベース。もちろん、澤が間に合うというツキもあった。スカウティングは日本のお家芸のはずなので得点は必然のものと言える。今後の課題は、選手交代の精度と次の試合で勝ち点を稼げるかどうか、そして試合が連続する中で、コンディションを維持していける準備があるかどうか。

正直なところ、体格差はもうカバーのしようがないくらいの差があり、スウェーデンが後半立ち上がりからパワープレー 1 本で来ていたらどうなったか分からない。そのハンデを、攻守両面のチームプレーの巧みさでしのいだなでしこジャパン。相手のイライラぶりからもわかるように、とてもしつこいディフェンスでボールを追い回し、素早くボールを動かして縦を突く。立ち上がりこそ堅さが目立ち、相手の大きさにとまどっていたような感じが見られたが、すぐにいままでの自分達のサッカーを取り戻せたのが良かったと思う。決定機の数だけを単純比較しても日本が大きく上回っており、内容も併せて快勝といって良い試合だった。初勝利おめでとうございます。次も難敵だけど、また中継を見るのでがんばってくだされ。

*1:id:shink-tank:20040812 さんからのリクエストがあったので急遽追加してみた次第。監督の評価は、準備とベンチワークくらいしか見えてこないし、コーチングの内容も聞こえないため、普段は割愛しております。監督も画面からうかがえるくらい激しく動いてくれるなら、なんでも言いやすいんですけどねぇ。かといって、大袈裟なジェスチャーで抗議したり、葉巻吸ってたら減点かというと、そういうもんでもございませんね。正直、難しいっす