ミラン vs ユヴェントス(CS)

セリエAの天王山。ドローになればまだ分からないが、白黒つけば、すなわちほぼ優勝に王手がかかる。つまり、負けると優勝が遠のくのは両チーム同じ。厳しい日程のため、メンタル的にチャンピオンズリーグ決勝でも影響がでるかもしれないミラン。かたや、リバプールに負けてチャンピオンズリーグを逃したことで日程的・相手関係ではミランよりも楽なユーヴェ。
立ち上がり、激しく早い攻防が展開される。ミランシェフチェンコの下にカカとトマソンを並べたトライアングルを中心に、セードルフガットゥーゾらががつがつと押し上げる。ユーヴェはワイドに開いたネドヴェドカモラネージを経由して、デルピエロトレゼゲで得点を狙う。中盤での競り合いはほぼ互角。普段は華麗なドリブルを披露しているカカはエメルソンやネドヴェドカモラネージに削られ、トマソンも有効に機能せず、シェフチェンコもフリーで抜け出ることがない。ガットゥーゾが守備に手を取られ、なかなかカフーが上がれないし、ピルロのパスも沈黙。
一方のユーヴェは今シーズンを象徴するように、連動性は薄い(それでもパスワークやカバーリングなどは文句ないレベル。グループとして何かしている様子がなさそう、という意味で)ながらも、個の力でガリガリとこじ開けるのに、セードルフガットゥーゾピルロがアタックし、マルディーニらDFが食い下がる。
お互いにこのぶつかりを避けるかのように、時折裏へ通すパスがチャンスに近い形となる。先にチャンスをつかんだミランは、シェフチェンコがフリーになるもゴール横へ流れすぎてブッフォンがセーブ。ミランはこれがもっともチャンスらしいチャンスで、前半は良いところがなく終了。
守勢に見えるものの、きっちりつぶし合いにもちこんで縦に長いパスをつっこんで切り替えを早く戦うユーヴェは、ミランのアタッカーを封じながら、運動量のあるネドヴェドカモラネージが両サイドを押し込む。デルピエロは調子が良さそうで、すぐにつぶれることもなく、スタムが手を焼いているように見えた。そのデルピエロから先制点が生まれる。跳ね返されたセンタリングをオーバーヘッドで中へ折り返したデルピエロもすごいが、そうくると信じてポジショニングを変えなかったトレゼゲもさすが。スタムが目を離した形になったところでフリーのヘディングシュート。ジダも触ったのだけど、結局枠の中へ。

後半、アンチェロッティは、ピルロに代えてサイドアタックのスペシャリスト、セルジーニョを投入。確かに、消去法、かつ、チームの総合戦力を考えれば不思議ではない選択肢だが、ここまでFKなどで窮地を救ってきた選手をここでバッサリと外してきた。
この交代が功を奏して、ミランが攻勢に出る。前半のユーヴェの向こうを張るかのように、3バックにしてカフーセルジーニョを外へ張り出し、ワイドに攻め始める。やはりセンターが強力なチーム同士だと、どうしても、裏を取る縦1本かサイドアタックに活路を見出すことになる。この流れがいけることを確認したかのように、後半10分でトマソンインザーギの交代。これも、供給源が確保できたなら、ストライカーを2枚にするというのは納得。そしてこれがビッグチャンスを生む。縦に1本で左裏へ抜けたシェフチェンコから、ワンタッチでインザーギへ。飛び出したブッフォンをかわしたものの、ザンブロッタが粘って、なんとか枠の外へ寄り切ってしのぐ。
完全に押し込まれ、流れが悪くなったユーヴェに追い打ちをかけるように、この前のプレーでクラッシュしたカモラネージが負傷退場。代わってビリンデッリ投入。戦術的な交代ではないので、カペッロはまだ動いていない。セルジーニョが張る左サイドに対抗しうるカモラネージの離脱はかなり痛い。それでも押し返せるのがユーヴェの地力を示していると言える。エメルソンがワンツーで抜け出し、トレゼゲにふわっとしたロブを送り、そのリターンをファーサイドでシュート。惜しくもサイドネットだったが、先制点と似たようなミランのエアポケットをついたチャンス。どこが、誰が、というわけではないのだが、ミランは時折、ポカッとしたスペースができ、動きが止まることがある。もしかしたら連戦の疲れがこういうところに出ているのかもしれない。その直後に再び訪れたミスからネドヴェドが切り込むところをガットゥーゾがたまらず倒してFK。距離はあったが、ドンピシャでデルピエロがヘディングして追加点…にならず、クロスバーを叩き、詰めたトレゼゲも上へふかす。直後に、ミランセードルフルイ・コスタ。交代がある度にチャンスをつかむミランは、左からのセンタリングが綺麗にテュラムの頭を越えてシェフチェンコの頭に合うが、厚く当て過ぎてゴール上へ。
ボールを持てる選手が増えたミランは、ワイドにボールを回してスキを伺うが、がっちりと固めたユーヴェのディフェンスラインは、ダイレクトパスが続いても揺るがない。押し込まれているユーヴェの守り方は非常にシンプル。前にトレゼゲデルピエロを残して、MFから後ろが基本に忠実に数的優位を作って囲い込む。まず1人チェックに入り、競り合いの形になると逆から他の選手が挟み込む。ファウルになるのを厭わず、競れたところできっちりつぶす。特にハーフウェイラインあたりではそれが顕著で、なかなか前に進めない。そこをミランが交わすため、外での攻防が増えたのが後半の流れ。
後半30分を迎えても流れは変わらずミランのペース。カフーがボックスに切れ込んで引き倒されるも、ノーファウル。31分にトレゼゲ→サラジエータ。この後にユーヴェが久々のビッグチャンス。右で受けたデルピエロが1本でサイドチェンジ。受けたネドヴェドがサポートに上がってきたエメルソンに戻すと、そのままサラジエータへくさびを打つ。サラジエータは寄ってきたネドヴェドへワンタッチで置き、そのまま切れ込んだネドヴェドがシュート。中でデルピエロがパスコースを作っていたが、そのまま打つあたりがネドヴェドらしい。
ミランは、ルイ・コスタに入るとチャンスになる。この人のコンダクターぶりは健在。右へ、左へ、裏へ、特別にスピードが早いわけではないけど、的確なパスを綺麗に送る。そのポゼッションを信頼してか、カフーセードルフは上がりっぱなしでセンタリングやシュートを放つ。カフーのシュートがスライディングしたカンナバーロの手に当たったということでスタジアムが沸くが、ノーファウル。そして訪れるビッグチャンス。左から入ったボールをフリーで受けたインザーギがワントラップでゴールを向くも、コッリーナさんはハンドの判定。もし判定が無くとも、インザーギのシュートはブッフォンが飛び出して封じていたので得点にはならなかっただろう…が、インザーギらしさは随所に。
後半20分過ぎくらいから、ボールの動くフィールドは、ユーヴェ陣内のゴール側半分くらい。完全に押し込まれるも、チャンスらしいチャンスはカフーセルジーニョのセンタリングくらい。それでも前にインザーギが入ったことで、裏へ抜けるようなパスの怖さが前半とは段違い。とはいえ、ユーヴェのディフェンスラインのコントロールが良いので、安易に抜け出そうとすると、せっかくのチャンスがオフサイドでフイになるため、急げない。
40分過ぎからパワープレー的にセンターへボールを集めるミランだが、ユーヴェの守備は揺るがない。FWのデルピエロやサラジエータのラインからディフェンスを開始し、ボールを休ませないばかりか、奪うことができれば、エメルソンやネドヴェドが飛び出してカウンターを食らうので、簡単にボールを失えない緊張は持続したまま。この状態はミランにとってはかなり厳しいはず。
ロスタイムに入っても、攻めるミランに守りながらたまに攻めるユーヴェは変わらず。アッピアーに代わったブラージが遅延行為で警告をもらう。5分のロスタイムの99%、ミランが攻め込むもタイムアップ。

見ながら書いたのでかなり長くなってしまったが、これでも割愛したところがある。そのくらい濃い試合。堅守のユーヴェを崩しきれなかったミランカペッロの汚いと感じるくらいの勝負の仕方が、そのままの結果になった。戦術面、戦う姿勢、駆け引きなど、勝負に対して参考にすべきことがらが満載。自分で見た試合の中ではEURO2004チェコ×オランダ以来の好試合…かも。