リボルノvsユヴェントス

勝ち点 1 を足せば残留確定のリボルノが、優勝を決めたユーヴェをホームへ迎えた。普通に考えるなら、主力を温存してベンチウォーマーを先発させるのだろうが、カペッロは手を抜かない。それが信条というのは、まじめな監督だと思う。常に、周囲から見てもベストだと認められるメンバーで望むということは、すなわち、ユーヴェのブランドを確固たるものにする。一方のリボルノは、イゴール・プロッティの最後のホームゲーム。今年で 38 歳だそうだ。セリエを見始めた頃から第一線で活躍してきた選手が、また一人去る。
試合の展開は、プロッティのこともあり、残留確定のこともあり、リボルノが攻勢の立ち上がり。非常にシステマティックな動きとボールの受け渡しで、簡単にボックス付近まで進行する。さすがにラスト1本は通さないユーヴェ守備陣だが、ルカレッリの高さは驚異。リボルノは、中から無理にこじ開けるようなことはせず、中から外へ振り、逆サイドへ大きくかえておいてから、センタリングでゴールを狙う。この試合、この「中→外→逆サイド→センタリング」という形がいくつも見受けられる。ロングパスを出すのは、ボールをロストするリスクが高いので、強豪チーム相手ならなおさら、安全に同サイドを早く攻めてリスクを減らす形になりがちだが、このあたりはプロビンチャとはいえ、ホームで気が強くなるセリエっぽい。
好調のリボルノの一瞬の隙をついたユーヴェ。簡単なカウンターから左サイド外でボールを受けたネドヴェドが、少し中へ切り込んで、コースをついた早いシュート。リボルノDFの背中を抜けて、GKが全く反応できないサイドネットへ。先制。ミドルシュートの巧いネドヴェドだが、このシュートもかなりすばらしい弾道の、良い時間帯でのゴール。前半は、このゴールでやや盛り返したユーヴェと強気に攻めるリボルノの構図で終了。リボルノの誇る 2 トップ、プロッティとルカレッリは、決定的な形に絡んでいたものの、結局沈めきれず。
後半になって流れはほぼ互角だが、徐々にユーヴェが盛り返し始める。ただし、前半からあった場面なのだが、ピッチの芝の長さがやや長めのようで、ボールが足下で突っかかっる。そのためユーヴェの選手がボールを失うシーンが目立つ。当然だがリボルノの選手は誰も困っていない。この辺は「ホームの有利」として分かりやすい。
プロッティとルカレッリは、相変わらずチャンスに顔を出すものの、なかなかフィニッシュが決まらない中、ついにプロッティが先制ゴールを決める。左サイドからふわりとあがったセンタリングを、カンナバーロがかぶった裏でヘッディングシュート。代わったばかりのキメンティは本当に不運としか言いようがないが、ファーストプレーがリボルノの同点弾とはちょっとかわいそうだった。それにしてもプロッティには恐れ入る。前半から、ユーヴェの敷いた浅いディフェンスラインをかいくぐって裏をつき、スピードを生かして数度フリーで抜けだす(オフサイドになったものもあったが、あれもオンサイドだったような…)プレーは、若いFWも見習うべき、非常に基本に忠実なパスコースの作り方、かつ、ボールの受け方だった。そのゴールが盛り返した雰囲気がルカレッリの逆転弾も導く。同じく左からのセンタリングを、中でスライディングしながら難しいバウンドを合わせてシュート。今シーズンの快進撃を支えた両ストライカーの揃い踏みで、スタンドは大騒ぎ。
このままでいけば大金星で、プロッティにも花が添えられるというものだが、しっかり引き分けに持ち込むのがユーヴェの、ユーヴェたるゆえん。後ろ向きにセンタリングを受けたトレゼゲが、得意の反転シュートを左隅へ決めて同点。これまたGKが動けない、陰のコースを通った良いシュートだった。
その後は、特別な場面は生まれず、振り返ってみれば、警告の無いクリーンな内容でタイムアップを迎えた。プロッティのホーム最終試合、その試合でのゴール、チャンピオンに一度はリードしながらの引き分けで、勝ち点を加えての残留確定。
ユーヴェは今更何かを語るでもない。その一方で興味深かったのは、旋風を巻き起こしたリボルノ。勝ちきれないということで残念さはあったものの、システマティックに守り、システマティックにボールを動かして、大胆にサイドを突く戦い方は、数字以上の脅威があったと言える。セリエを見始めて10数年経ったが、予算が限られているプロビンチャの戦い方は、今も変わっていない。手腕のある監督に鍛え上げられた組織プレーに、スーパーストライカーの存在。これを発展がないと斬ることもできるが、有力クラブが複数ひしめくセリエAで、現実的な当面の目標、「A残留」を達するために長いこと練り上げられてきた、最も効率的なやり方なのだろうと想像した方が素直だと考えられるだろう。何しろ、湯水のごとく予算を持つ某石油王のクラブとは違うのだから。