イングランド vs アルゼンチン(CS)

プレーオフが行われる、インターナショナルマッチウィーク。すでにドイツ大会への出場権を獲得した国同士のフレンドリーマッチ。ただし、この2チームはフォークランド紛争からの因縁で、フレンドリーとは名ばかりの真剣マッチになること間違いなし。2002年W杯依頼の対決は間違いなく熱くなることは容易に想像できた。なにせ、会場はスイスのジュネーブ。2008年にオーストリアとの欧州選手権の共催が決まっているという将来を考えれば、会場警備のリハーサルといった向きもあるだろうが、中立国でないと何が起こるか分からなかったから、という安全面での理由が本音かなぁ。
この試合、選手達をあれこれ語る前に、主審の見事さを記しておきたい。前半開始後の早い時間に、かなりきわどいタックル(場合によっては退場でも仕方ないかもしれない)を、注意で済ましたことで、その後に荒れるのを食い止めた。その後は、適切に警告を出しながらも、居丈高になることはなく、見事にコントロールしきった。審判委員会の方々はご覧になっただろうか…?
で、試合。なかなか得点が生まれなかったにも関わらず、「内容が濃い=プレーに無意味な無駄がとても少ない」。

イングランド(4-4-2)
GK:ロビンソン
DF:ヤング、テリー、リオ・ファーディナンド、ブリッジ
MF:キング(底)、ランパード(前)、ベッカム(右)、ジェラード(左)
FW:オーウェンルーニー

アルゼンチン(3-5-2)
GK:アボンダンシエリ
DF:サネッティアジャラ、サムエル
MF:デミチェリスカンビアッソ(底)、マキシ・ロドリゲス(右)、ソリン(左)、リケルメ(前)
FW:クレスポ、テヴェス

立ち上がりは、「アルゼンチンの速いチェックとボール回しに手こずりつつ、縦に長いボールを入れて散発的なカウンターを繰り出すイングランド」という図式。
アルゼンチンが優位になっている理由は、中盤での数的優位(5対4)をきっちり生かしていること。リケルメとテヴェスを中心にボールがしっかり収まり、速く、深くまで侵攻できている。一方、守備は、意識をしているように見えるのは、左のソリンがベッカムの頭を抑えているくらいにもかかわらず、マキシ・ロドリゲスリケルメを中心に右サイドの裏(ジェラードの裏やブリッジの外)を使えていることで結果的にジェラードをあがらせない。
イングランド側から、中盤を抑えられてしまっている理由を数的優位に求めないで考えると、ディフェンシブハーフのキングが、アルゼンチンの自由に動くMFに振り回されて、的が絞れないことが大きな原因。ランパードがコンビで守備に徹するよう切り替えれば良いのだが、そこまで徹底できず、かつ、取り返しても2トップに上手く収まらないので「1に戻る」(つまり取り替えされてアルゼンチンボール)という悪循環。
必然のように前半34分、しつこく使っていた右サイドからのクロスをクレスポが中で合わせてアルゼンチンが先制。イングランドは、その5分後、カウンター気味の流れからロブをベッカムが頭で落としたところにルーニーが走り込んで強シュート。同点。一連の流れに5人くらいが絡んだ厚みのある形。ベッカムは、外からのクロスではなく、長い距離を走ってゴール前に入り込み、はじめてソリンを出し抜く決定的なプレーでお膳立てができた。ルーニーは、その前のカウンターで完全に抜け出したのにポストに当ててしまっていたので、当然のように決めなければならなかった。前半は、スコア上はイーブンながら、アルゼンチン>イングランドの形のまま終了。
イングランドのブリッジがコンチェスキーに変わった以外変更はなく後半スタート。守備一辺倒だった左のサイドバックを変えただけで流れが変わるわけでもなく(おそらく、故障明けの大事を取ったのだとは思うが)、アルゼンチンは後半8分にサムエルのヘディングでリード。13分に、結局流れを押し返せなかったキングにかえてジョー・コールが投入されるも、決定的に流れは変わらず。アルゼンチンは25分過ぎから、クレスポ、テヴェス、リケルメを下げる余裕の(?)交代。イングランドは後半35分に、右のヤングに変えて2m超の長身FWクラウチを投入。攻撃の絶対的な核が下がって怖さが薄れたアルゼンチンに対して、クラウチの投入でアルゼンチンDFが必要以上に警戒し始めたことで、後半立ち上がりから全く消えていたオーウェンがシャドウストライカーとして完全に復活。後半41分、ロスタイム、と立て続けに2点をゲットし、イングランドがアッサリと逆転勝ち。
イングランドの課題は、ベッカムの長いパスだけの状況でルーニーを抑え込まれると、攻め手がほとんどゼロに近いこと。ジェラードやランパードが飛び込んできたり、右のヤングが高い位置まで出てくるときには、さすがに良い形が出る。
一方のアルゼンチンは選手層の厚さということになるのかもしれない。サビオラは結果も存在感もなく、クルス、ルイス・ゴンサレスイングランドを押し込んだままにしておくことが出来なかった。
何試合も詳しく見ているわけではないので、この試合だけで双方を見るとこんな感じ。イングランドは勝ちを拾い、アルゼンチンは負けた事に対する大きな理由がある、という、第3者から見るとなんとなく丸く収まったような…。が、そう簡単なもんじゃないだろうなぁ。