レアル・マドリッド vs 東京V(CS)

CS をザッピングしていると東京 V 戦を再放送をしていたので、後半 25 分くらいからを先に見る。その後、残りを録画で確認するという、逆さまな見方をする。本来ならのんびり見ようと思ったのだけど、すぐにビデオを見たのは、CS 再放送分の試合内容、特にヴェルディがとんでもなく出来が悪く見えたから。まさか、アルディレスがトレーニングしているチームが、こんなグズグズなわけがなかろう…ということで、気になったため。
結論から言うと杞憂だった。試合開始直後から、たまたま再放送を見はじめた後半の 20 分過ぎくらいまで、ヴェルディは、点差よりも内容で健闘していた。特に、桜井を中心とする攻撃陣は、すばやいチェックに苦しみながらも、身体を張り、シンプルにどんどん展開して、レアルのディフェンスラインの裏をついたり、中をこじあけようとしたりする。そもそも、4 失点はそれぞれ内容が違う。先制点は、瞬間最大出力のレアル(というよりジダン)らしいプレー。早く、シンプルなパスワークからラストパスを受けたジダンの高度な個人技で計 3 人を一瞬で無力化した、非常に魅せるプレーだった。 2 点目は、確かにベッカムの瞬間ロングフィードと、ロナウドの動き出しの早さでヴェルディの隙をついたのがすばらしいのだけど、 GK の判断ミス(ちょっと飛び出しすぎ)というのもあったと思う。後半の 3 点目、 4 点目は、ヴェルディが交代選手を投入した後、チーム力が落ちてから取られたもの。後半のは「ただでさえレベル差があるのに、それが更に開いた後の失点」なので、気にする必要は無いと思う。むしろ、スタメンが繰り出した鋭い攻撃が、レアル守備陣をも混乱させられた(最後は個人能力の高さで締められてしまったが)ことに自信を持っていいのではないだろうか。ヴェルディが崩れたのは選手が交代しはじめてから。特に新外国人のウーゴが自分のいいところを見せようとしたのか、判断悪く持ちすぎてペースを乱したのと、森本が平本ほど確固たるポイントになれなかったので、攻め手がなくなってしまったのが原因ではないだろうか。それまでは、本当にがんばっていたと思う。
どの得点シーンもスーパーなのだけど、フィーゴの得点が最も印象に残っている。競られたディフェンダーを瞬間でいなし、目一杯足を伸ばされたタックルの外側から、軽くひっかけるように、そしてコントロールされた強くて綺麗なシュート。張り付くくらい寄せても、フリーにしたごときシュートを打たれるんだから、守ってる方はたまらないだろうな…。
というわけで、ヴェルディの必死さと対照的に、一見、ゆるゆるとプレーしているように見えてしまうレアル。よく観察すると細かくポジション修正を行い、キビキビとチェックに行くという、実に手抜きの無いプレーをしていた時間帯は多かった。余裕があるように見えるのは、個人技術の高さに他ならない。つまり、ボールコントロールの精度が抜群に高く、ほぼ全てのプレーがシンプルで素早いため、守備側が、奪取に行くポイントを絞ることができない。対策としては、あらかじめがっちりマンマークについておいて、そこにボールが入るところをつつくか、スペースへ出るボールを予測して競り合うくらい。おそらく、ゾーンで守ったら、何点やられるか分かったもんじゃないと思う。それでも、守備側の視線を振り切ってしまうような早く、長いパス交換でゆさぶったり、鋭い縦パスでいとも簡単に守備を崩してしまうのはすごい。
攻撃力と多彩さを支えるのは、「レシーバー」と「攻撃のコア」の両方がやれる選手たち。ロナウドソラーリジダンフィーゴロベルト・カルロス、後半から出たラウル、モリエンテス。誰もが、競り合いながら、スピードに乗ったまま、難しい体制のままでボールをピッタリとコントロールできる。コントロールというのは、ダイレクトプレーだったり、トラップだったり。ブレが少なければ、次のプレーへつなげる時間が短縮され、それが連続すれば、必ずフリーの選手ができる。このレベルの選手をゴール前でフリーにしたら…。そして、この人たちはみんなゴールゲッター。これがレアルの強みであり、この試合でも如何なく発揮された。ベッカムが含まれていないのは、ディフェンシブハーフで、どちらかというと供給側に回る方が多いから。もしベッカムが、人に強い今の特徴そのままに、ゾーンを抑えるコントロールができ、危機察知能力の高さを備えたディフェンシブハーフとして大成したら*1、コンディションの良いこのチームを止める相手はいなくなってしまうかもしれない。
市原戦では酷評したが、コンディション(フィジカル&天候)のせいもあったのかな。今日のこれがベストメンバーなんだろう。さすがに予備予選が近いのもあり、今日を見る限りでは、ほぼ仕上がっているといっても良いように感じた。ヨーロッパのトップレベルとの対戦でも同じようなことができるかどうかは別にして、組織としても非常によくまとまっていたと思う。対照的に、わずかだがほころびを見せたのは守備。がんばったヴェルディの攻撃陣に守備網の隙を突かれた。全て完封しろとは言わないが、危険なエリアへ進入させないやり方は他にもあったと思う。高い位置からのプレッシャーのおかげでディフェンスラインだけがさらされるようなことがなかっただけに「あら」は見えなかったが、昨シーズン終了間際に崩壊した守備がどう改善されたかをうかがう機会は無かった。
03-04 は、放送権が変わった関係でほとんど試合を見なかったレアルだが、それぞれが自国の代表で不動の面子が多いだけに、見慣れた気がした。それで細かく考察しようと言う気になったのだけど…。WOWOW を再契約してまで見たいかというと、そこまでは思わないなぁ。「大物買い集め」が好きではないのだから仕方が無い。大物を獲得するのを否定しないけど、原石を磨いて強くする方が面白いと思うので。そうそう。親善試合としては満足でしょう。

*1:要するに「ロングフィードがずば抜けて上手く、変幻自在の FK を蹴るマケレレ