vs ナイジェリア

身体能力に優れるアフリカ勢との試合。このくらいのレベルでどういう差があるのか知らないので楽しみに見始めたが、開いた口がふさがらない。やっぱり、 1 歩が広い。 10 cm が大きく、高い。結果は 0-1 の惜敗だが、内容は悪くない。むしろ大健闘。ただ、掴んだチャンスを全てフイにした勝負弱さが一番の問題だったかもしれない。軽快なパスワーク、組織的な守備、小気味よいオートマチズムをベースにした変幻な攻撃は、やはり魅力がある。このサッカーで得点できなかったのが、本当に惜しい。それでは、個別に。

山郷のぞみ:GK
失点シーンは相手のミスキックとも相まって、コースが良かった。それ以外の決定的とも言えるシーンでは、身体を大きく使い、タイミングよく飛び出してコースを消し、セーブをしていた。頼もしい守護神ぶり。忙しい 90 分だったが、集中が途切れることなくプレーしていた。

山岸靖代:DF
早くて高くて強いアタッカーに非常にがんばって対抗していたが、特に後半にかなり破られるシーンが多かった。これはもう、相手の身体能力が素晴らしくスピードがあることが原因なので、どうしようも無い。ただ、その前の段階で宮本や小林と、前節のようにチームで上手く対抗したかった。失点シーンも同じ。後半に、攻め手を増やすために、山本と交代。

磯崎浩美:DF
かなり良い感じで守れていたのではないだろうか。特にカウンターに対する嗅覚の鋭さ、早い相手を止めるスライディングタックルの精度、それらを中心としたディフェンスの技術が、試合の中で見る見る向上していったように見えた。正確には慣れたのだろうが、その順応ぶりは驚いた。

下小鶴綾:DF
目立って崩れたシーンは無かったが、川上がスピードのある相手に振り切られやすいため、前節に比べればずいぶんとカバーリングが多かった気がする。競り合いにも身体を張り、ドリブルに冷静に対処。ディフェンスラインでボールを持った際に、磯崎と最終ラインで冷静にボールを散らすのも、ずいぶん板に付いてきた。願わくば、川上をあげるタイミングを作れるような押し上げがもっとできれば良かった。

川上直子:DF
いままでの試合では見られないくらいディフェンスラインに張り付かざるを得なかった。低い位置にいるため、スピードに乗ったアタッカーを相手にする機会が多かった。あがれない原因は、相手の早いカウンターと、酒井が封ぜられていたため。酒井経由で外へ展開する流れを引き出していたのが基本パターンだったため、右を向かせてもらえない酒井の周りでは、あがる機会を多く失っていた。後半になっての時間帯では、ずいぶん盛り返して惜しいパス、 FK をボックス内へ入れていたが、得点にならず。

酒井與惠:MF
身体を張った非常にしつこいディフェンスでボールを食い止め、取り返し、全線へ繋ごうとしていたが、何しろ 2 トップとアウトサイドがガチガチに固められてポイントとして機能しないので、くさびが全く役に立たないのが辛かった。また、右を封鎖されて川上を引き出すこともできなかったのも、前半の流れを引き戻せなかった原因。後半になって少し流れが良くなり、丸山が投入されてレシーバーが増えた頃には、ずいぶん川上を走らせるプレーを復活させられたものの、ちょっと遅かった。

宮本ともみ:MF
長いパスで裏を尽き、堅い守備で好調だったが、接触プレーで負傷退場。特に、その直前に放ったミドルシュートが素晴らしかっただけに、あの調子でフル出場できていたらもしや…というタラレバを言いたくなるデキ。決勝トーナメントに残れたら、ぜひ見たい選手の 1 人。

小林弥生:MF
右サイドの「酒井−川上」ラインが全く機能しなかった時間帯に、宮本や澤からのパスで左サイドからチャンスメイク。前節に比べると非常に良い動きで前半の数少ない攻撃チャンスを展開していた。ただ、守備面はがんばりが分かるだけに通用しないのがとても残念。後半、前半にとばしたツケが来たのか、動きが落ちてきたところで、丸山と交代。

澤穂希:FW
フィジカルコンタクトも当たり前のように対抗し、起点となり、なかなかくさびが入らない展開でも孤軍奮闘した。後半になってからは、その本領の片鱗を見せ、ビッグチャンスを数度掴むもゴールならず。密集やスピードに乗った場面、相手と競り合いながらの場面などの難しいタイミングでのボールコントロールが復活し、期待してきただけに惜しかった。決勝トーナメントに進出できたら、ゴールできるかもしれない、というところまで調子が上がっているようだ。

荒川恵理子:FW
この試合の POM 。誰がどう言おうが、POM 。フィジカルコンタクト、スピード、テクニック、チャンスに飛び込む嗅覚。全てにおいて確実に世界レベルに慣れ、その高さで闘えているように感じた。特に圧巻だったのが、後半、相手ディフェンダー 2 人をかわして大谷にセンタリングをドンピシャで送ったシーン。競り合いながらボールをキープし、足裏のボールコントロールでタックルをかわし、キックフェイントで一呼吸入れてスキを作ってからパス。他にも裏に抜けたり、頭で落としたり、ワンタッチのくさびを簡単に落としたり。前半こそてこずったものの、後半はまさに荒川ショーといっても良いすばらしさだった。

大谷未央:FW
前節より、更にフィジカルコンタクトに苦しんだ。それでもくさびをうけようと身体を張ってなんとか攻撃のリズムを掴もうと奮闘。後半になって日本のリズムになってから数度決定機をつかむが、残念ながらノーゴール。調子は悪くないが、もっと俊敏さを生かしてボールに絡めるように工夫したいところ。持ち味を生かす手段はまだあるはずなので。ここで頭打ちになると、正直、世界レベルでは辛い。

柳田美幸:MF
負傷した宮本の代わりに急遽ディフェンシブハーフとして出場。やはり、中盤の底でコンダクターとして機能するには、宮本に比べて劣るが、それでもテクニックの高さでボールを散らす努力を続ける。ディフェンス面でも苦しいなりに追いすがったり、奮闘した。後半になって山本が入ってから外へ出て、少し持ち味が出るかと思ったが、右の川上が機能し始めて流れが変わったので、外での持ち味を見る機会は無かった。

丸山桂里奈:FW
運動量の落ちた小林と交代出場。初めての 3 トップというスクランブル状態の中で、荒川と大谷を前に張らせ、沢の前で動き回ってくさびとして機能したことで、レシーバーが増え、日本の流れを生むきっかけとなる。パスでの展開、ドリブルともに通用していたが得点は出来ず。この大会をきっかけに澤と同じレベルまで上がりたい。

山本絵美:MF
得点が欲しい、残り十数分という時間帯で、山岸に代わって投入される。ちょっと流れに乗り切れずに、いきなりピンチを招いたプレーもあったが、徐々にフィットして攻撃を支える。得意なアウトサイドではなく中央でのプレーだったこともあってか、いつものプレーより守備に意識を割いていたのは良い。

敗れはしたが、見ている方は全く悔しくない。惜しむらくは、あれだけ演出した決定機を 1 つもものにできなかったこと。変な言い方かもしれないが、同じ負けるなら 1-2 で負けたかった。つまり、あのサッカーは、すばらしい展開でどこからでも点を取れるということを知らしめたかったと思う。それくらい、特に後半頭から繰り返された展開はすばらしく、見ていて楽しかった。