vsイラン(BS7)

スタジアムを見渡すカメラに写るのは、現地の人ばかり。とはいっても、アウェーの洗礼はどこでも受けているし、大黒を別にすれば、今更という選手ばかり。本当に前回の予選から比べれば戦力・経験ともに申し分ないメンバーで戦えてるなぁ、と隔世の感がある。
この試合、一言で言えば「最悪じゃないけどね」というところ。最小得点差でアウェー敗戦というのは、決して最悪ではない。それから、選手層の厚さを再確認できた(練習試合ではない状況でという意味で)のが得たもの。改善点は山ほどあるが、さしあたって、玉田と高原の連携は壊滅的に悪いというのがよく分かった。
前半はまずまずの立ち上がり。これといったシーンは無いのだけど、右サイドのオープンスペースを使う狙いで形ができていたのは良かった。ただし、 2 トップにボールが収まらなさすぎ。玉田、滑りすぎ。この玉田、一頃の輝きが無い。普通の選手になっちゃった気がする。失点シーンは事故。相手にツキがあったとしか言いようがない。その前の段階でつまらないファウルでFKを与えたということはあるにしても。
後半は、柳沢が入った時間帯以降に、良い流れが出た。それまでは、なんだかチグハグという言葉がぴったりの混乱ぶりで、ハーフウェイラインから先へボールが運べない。それはFWへボールが収まらないという理由と、パスミスが多すぎるという2点につきる。得点シーンは失点のお返しというくらい、似た形で福西がゲット。逆転された 2 失点目は、中東相手に良く食らうシーンという形。98 年のダエイや、94 年の出場を絶たれた同点ゴールなんかが思い浮かんだ。やっぱり緩くてもハイクロスなら点が入っちゃうのなぁ、と、進歩のなさにちょっとがっかり。
では、個別評価へ。
楢崎正剛:GK
甘めかもしれないが、2 失点はほとんどノーチャンスと言っても良い。可もなく不可もなく、ハイクロスをパンチングで弾き出したり、ハッキリしたプレーが多かったのは良かった。フィードを簡単に外へ出すのは勿体ないからどうにかして欲しい。とはいえ、今日の出来なら安心して任せられる。
加地亮:DF
前半は幾度となく飛び出して前へ行くが、肝心の中田との連携がイマイチ以下。中田に任せて駆け上がるところを重なったり、何度となくもたついてしまったところがあった。それから、センタリングを当てすぎ。落ち着いて再度切れ込むとか、何か工夫が欲しい。この試合も失点に絡む。やっぱり「やばい所を察知する力」はあるのだから、ちゃんと止めてくれ。お願い。
宮本恒靖:DF
悪くなく、むしろ良かったのだけど、やっぱりライン 4 の中は辛い。システム論ではないけど、バックが 4 枚だと、ストッパータイプは 2 枚になるから、中澤がつり出された 2 失点目の形では、制空権を奪われてしまう。この人は、プレーエリアの掌握で力を発揮すると思うので、3 バックのセンターとして使ってあげるのが吉では。
中澤佑二:DF
ポイントをずらされた 1 失点目、危機察知能力が徒になった 2 失点目。相手も馬鹿じゃなくて、研究され始めている。そして、ブンデスリーガで活躍する選手相手では、中澤の個人能力に頼るのも限界が見える。皮肉ではなくて、ワシントンをものともしなければ、「中澤大明神」のままでいいけども。
三浦淳宏:DF
前半は多少もたついたところもあり、マハダビキアやカリミの対応でほとんど自陣で過ごしたが、ダエイが退いて相手の組み合わせが変わってからは、そこそこ攻撃参加も。中村があんまり役に立たなかったのに、良くこらえていたとは思う。ただ、今日の出来だと「絶対要る戦力」にはなれてない。
福西崇史:MF
先に言っておくと、得点シーンはこの人ならではの嗅覚。ああいうところにいられるなら、高原じゃなくて福西をFWにして柳沢と組ませたらどうだろう?冗談ではなくて、この人ユーティリティプレイヤーなんだから。守備面では不可解なファウルと詰まらんファウルが積み重なって、いつも通りの悪役っぷり。懸念されたバイタルエリアは、イランがサイド攻撃に固執したため、不安なし。あえて弁護すると、今日ほどきれいな福西は珍しいと思うが。
小野伸二:MF
前半にミドルシュートを放ったときは「お」と思ったが、それだけ。特に効果的な配球もなく。その直前にフェイエノールトでの小野を見たのだけど、それから比較するとゴールから遠すぎる。そこで前へ出て行くわけでもないし、ちょっと余裕がありすぎるかもしれない。使い方としてはフェイエノールトの選手の方が、小野の特徴をよく分かってる。それは、預けたボールがワンタッチで出てくる(=密集のプレッシャーをものともしない)ということ。逆に言えば、それを引き出せない、使わないなら、今の日本を見ても小野が出ている必要はない。
中田英寿:MF
前半の状況だけ見るとフィオレンティーナと同じだけど、中村がいたのが大きな違い。張り付かれ始めたと気がつくや、ポジションチェンジを繰り返して、サイドのプレッシャーが低いスペースでボールを受け始める。今日決定的に悪かったのは、前へ行くボールが少ないのと、失う回数が多かったことだが、相手に与えるプレッシャーを考えると、この程度の不調で外すほど価値は落ちていない。
中村俊輔:MF
この試合最大の不幸は、マハダビキアに張り付かれたこと。いくらセリエのプレッシャーになれてボディバランスやボールコントロールが良くなったところで、ブンデスリーガサイドアタッカーとしてプレーしている選手と競り合って勝てるほど強くはない。このあたりを回りがもっと察してやるとか、そもそも自分がもっとはやく気がつくべき。この人と中田の不用意なボールロストが無ければ、もう少し優勢に戦えたはず。とは言えあのスタジアムでは「 Man On! 」すら聞こえなかったかもしれないけど。アベレージで見れば普通だけど期待以下。
玉田圭司:FW
使えない左サイドへ流れたり、高原の邪魔をしないように、と、腰の引けたようなプレーが続いて、正直らしくない。一番気になったのは滑りすぎたこと。前半の早い時間ですぐに高いスタッドのスパイクへ切り替えれば良かったと思うんだが、持ってないんだろうか。途中で柳沢と交代したが、今日の出来なら仕方なし。
高原直泰:FW
前回とほぼ同じ感想。なんでこんなに下手なんだ?代表にくると。気が抜けてるのか、相手を見下してるのかわからんけど、あれだけボールが収まらないと攻めたくても攻められない。収まらないから自分で前を向くこともできず、結局「らしさ」がほとんど出ずに終了。うーん。重要なプレーヤーなんだがなぁ…。
柳沢敦:FW
驚いた。前から「 Off the ball の達人」とは言われていたが、こうもスムースにスルーパス(&前に出るパス)を足下に納めて前を向けるのか。セリエでやっている効果なのか。明らかに投入されたところから日本に流れが戻った。正直、追加招集であわてて来た、という状況だったので期待していなかったが、前よりは良くなっている。
大黒将志:FW
交代出場で精力的に動くも、ボールにさわれずに終了。この時間で毎回仕事ができるほど、予選は甘くない。が、もくもくとチャレンジする姿は続けて欲しい
小笠原満男:MF
次がない小野と交代で出場。中田の位置を下げて前に入るのだけど、小笠原を慣らすという狙いだったのだろうか。小野は体力的に悪くなかったように見えたし、投入するタイミングと意図がよく分からなかった。
結果論だが、やっぱりDFは 3 枚で良かったんじゃないのかなぁ。イランが評判通りにサイドアタックを繰り返してくれたので助かったとも言える。反対に、ダエイが負傷でいなくなったのはまずかった。割と流れを止めていたところがあったので、助かっていたところが多かったのに。無理にシュートまで持っていって壊れちゃうなよ。
次節は懸念のバーレーン。間違いなく勝たないと、イラン頼みの予選になってしまうので、ここで「 1 」がとれなかったのは本当に痛い。98 年大会の予選ほど胃は痛くないけどね。