vs バーレーン(VHS)

ビデオを仕掛け損ね、なんとか撮れた前半20分過ぎから見る。
3 バックに戻した日本は、ボールがスムースに回るように見える。加えてバーレーンの早い攻めが少ないので、安心して見ていられる。点が入らないもどかしさはあるにしても。
結果論で言うわけではないが、バーレーンの持ち味は、思い切りの良さとカウンターのスピード。きっちり組み立てられても長いパスにさえ気をつければ、どうってことない。見始めたところからは、後半終了間際の押し込まれ意外で危なそうなシーンは数えるほど。そして怖いカウンターも、先細りになっていく「スピード絶対最優先タイプ」のため、なんとかスピードを遅くして、次の一手を封じれば、そこからは変化しないので問題なし。実際に、このやり方で何度もカウンターを止める。また、中田の追い回しと前線でのプレッシャー、中盤守備の厳しさで、がっぷりに組んだことで、バーレーンの良さは消え去っていた。
というわけで、個別評価へ。
楢崎正剛:GK
決定的ピンチをしのいだよりも枠に飛んだボールや、ハイクロスをきっちりセーブしていた。カウンターっぽいカウンターでも中に入ってくる回数が少なく、ピンチに見えるシーンが多かった割にはさほど出番はなし。
加地亮:MF、DF
スピードとかあたりの強さとかより、相手の上背が同じくらいならなんとでもなるのかな?特に後半で突破やクロスを繰り返してチャンスを作る。ミスしても早い段階でつぶしたり、過去の試合をさかのぼっても、これほどの加地は見たことがないかもしれない。クロスの精度さえあがれば、加地のサイドは確実に攻撃の核となれる。
田中誠:DF
さすがにこのレベルが相手なら堅い。この試合は加地ががんばっていたので、本来のディフェンスラインできっちりカウンターをしとめる。地味だが、いつも通りの信頼感。
宮本恒靖:DF
やはりというよりも、ハッキリと分かり切っていたことだが、3 バックのセンターの方がフィットしている。細かい評価としては普通よりやや良い感じか。
中澤佑二:DF
制空能力発揮。自分の守備範囲のハイボールは全て跳ね返し、厳しい姿勢でも蹴り出す。アジア杯ほどではないにしても、鬼神の中澤の片鱗が見えた。攻撃面での期待はあったものの、ついぞノーチャンス。惜しいところはあったが、さすがに届かないボールばかりでは…。
三都主アレサンドロ:MF、DF
かなり良い方。なんだけど、不満。どうしてもボールを受けると相対してしまう場面が多い。そんなに馬鹿正直に正対しなくて良いのになぁ…。という指摘をするまでもなく、早めで簡単に出したパスや、ワンタッチプレーの方が良い展開を生んでいる。それと、裏で受けるときに、縦じゃなくて斜めにボックスへ走り込めっての。アシストだけで満足なのか?君は。
福西崇史:MF
中田を前に置き、追わせておいてスイープするという役割分担。並ばすに縦の関係を保って、ほぼ1人でセンターを押さえる。この形は、もたついたカウンターには効くが、早いカウンターにはややもろく、つり出されるのが怖いのか、センター、しかもディフェンスラインに近すぎるような位置取りで、変に中をあけてしまったのが後半の終了間際 15 分あたり。ここを狙うそぶりをしながら外を使ったり、早いクロスを送り込んだり、と良いように揺さぶられた。
中田英寿:MF
明らかに不慣れなところをやっている、というようなもたつきは無く、高めでのボール奪取に集中。福西のカバーを頼りに前掛かりが多かったのだが、いつものように後追いでファウルという機会は少なかった。時間経過とともに軽快な調子を取り戻し、プレッシャーの緩い深めの位置から、タイミング良く飛び出したり、奪ったそのままでドリブル→パスや、長いパスを送るなど、攻撃のリズムを生んでいた。ただ、諸手を挙げて喜べるとは言えず、本調子ならこんなものではないはず。ヴィオラで出場機会を増やし、後半 3 戦ではより一層の動きを期待したい。
中村俊輔:MF
三都主や高原、ファウルをゲットするのはお手の物という鈴木でさえ駄目なのに、この人が倒れるとファウルをもらえるという不思議なジャッジはさておき。最近の傾向として、どこかでフッと緩むことがあるのが問題。ボールをさわる回数が多いため、失う回数が少なければ、その分優勢に戦えるのに、普段のしつこさとは比べものにならない淡泊なプレーでボールを簡単にロストするのはどうかと思う。後半、終了間際の押し込まれは、この人の気抜けが一因だと思う。
鈴木隆行:FW
相手に屈強な選手が少ないのに比例して、地をはう場面は少なかったが、その分前を向けていたかというと、いつも通り。鈴木は鈴木。当てられたくさびを丁寧に時間をかけて落とし、抜け出すわけでもなく、なんとなくファウルをゲット。パワーはあるんだから長いシュートを放つ位してくれ。とはいえ、シュートを放ったり、落ちない運動量で前から追い回したりと、全く駄目というわけでもない。
高原直泰:FW
前節よりマシ。だけど、コンタクトできたパスの数を考えると大不満。ポストプレーは相変わらず駄目で、反転からのシュートだけはキレている印象。点が取れなくて慎重になりすぎのようにも見えたが、もっと泥臭くつま先勝負で良いのではないだろうか。インサイドキックのフォームを作ってる間にGKとDFに挟まれるようなFWは正直情けないというか頼りない。
玉田圭司:FW
アジア杯の実績から、暑いとか足場がズルズルとかが理由ではないと思うけど、前節からは比べものにならないくらい、「らしさ」の片鱗が見えた。ただ、やっぱり高原に気を遣っているのか、コンビプレーの場面では、なんとなく積極性にかけるように見える。「中田からのパスをまたいでウェーブし、高原とのワンツー不発」のプレーは久々に見た流れるパスワークで良い感じだった。こういうの、もっと早い時間からできませんか…?
稲本潤一:MF
ロスタイムで中村と交代で出場。時間稼ぎ&顔見せなので評価できず。
結局は、しつこい前線からのプレッシャーが生んだといってもいい、虎の子のオウンゴールでの 1 点で勝ち点 3 を得る。
当面の問題は攻撃の「形」。回数はそこそこあるのだが、精度が悪い。どのレベルでも、どんなチームでもある程度のオートマチズムは要るというのがはっきり分かった試合だと思う。せっかく早い段階でボールを奪っても、選択肢がありすぎたり、選択が悪かったりしてチャンスの芽を自分たちでフイにしてしまうことが多かった。ボールを奪取した位置、高さによって、展開パターンを決める方が良いはず。 02 年のセネガル代表を率いたブルーノ・メツ元監督の話が思い出される。曰く、ボックス付近まではオートマティックに運び、そこから先がイマジネーションの勝負をするようにしてきた、と。
今の日本代表は、組織守備が立ち直りつつある。ここから先は、オートマチズムをベースにした早い、精度の高い攻撃を上積みすることで、ドイツが見えてくるはず。
メモ代わりにバーレーンのこと。ドイツの頭脳で組織守備ができつつある。できつつある、というのは、完全に連携がとれているわけではなく、簡単に振り回されるから。ボールが好きなようで、ゴール前でも 2 、 3 人が同時にボールにつられるシーンが目につく。それから、簡単なフェイントにつられるので、キックフェイントやスルーなどは効果的だと思う。次回のアウェーまでに守備のレベルが格段に上がることはない上、主力 DF が 2 人も出場停止なので、勝ち点 3 を狙うべきかと。とか言っても、やるのは選手なんですけどね。期待したいと思います。