ブルガリア vs クロアチア(BS1)

W杯欧州予選の1試合。それぞれ、国やチーム自体には派手なイメージは無いながらも、W杯本戦ではベスト4以上の成績を残したことがある。昔の話とはいえ、今でも、欧州の各国リーグに優秀な選手を輩出している、輸出国として、今でも質の高さは間違いない。
注目は、ブルガリアが予選リーグ3位の位置から、どう抜け出せるか。クロアチアスウェーデンとマッチレースをしのぐのか。という2点。90 年代頃から欧州を見ている人にとっては、また、古くからの柏のファンにとっては、あのフリスト=ストイチコフが39歳という若さながら代表チームを率いていることに、何かしらの感慨はあることに同意していただけると思う。
試合の方は、期待以上の質の高さとW杯予選の緊張感に満ちた好ゲームとなった。結果を見ればアウェーに乗り込んだクロアチアが完勝したと言えるかもしれないが、ブルガリアは決して悪くなかった。多少のズレやツキの無さから決定機を逃したことと、クロアチアの瞬間の集中力にしてやられたと言える。
中身が濃いことと、久々にぽーっと見入ってしまったことで、時系列を追うのは難しいので、あれこれ並べ立てようと思う。
まず、ブルガリアジェフ千葉のストッパー・ストヤノフがいる!というのに驚いた。いつもながら「地味な実力派」のコーチングスタッフと選手をつれてくる、ジェフ千葉のコネクションと手腕には恐れ入る。レバークーゼンで得点王争いに名を連ねたベルバトフは、その実績に恥じない動きでクロアチアゴールへ幾度も迫ったが、さすがにエースストライカーをフリーにさせてくれるほどクロアチアは甘くない。再三、このベルバトフへの中継点になっていたのが左サイドのゲオルギエフ。なかなかスピードと個人技のある、個人で打開できるタイプのサイドアタッカーに見えた。フィオレンティーナで中田と同僚であるポジノフは、後半に途中交替で出場するも、流れをひっくり返せるような活躍はできず。残念ながら「プレッシャーに負けた」という寸評で表せると思う。初めて見たチームだが、各選手の技術や戦術眼、チームとしてオーガナイズされた様子は、決して悪くなかった。返せた1点は FK によるものであり、得点に至らなかった数度の決定機とあわせて考えると、こと攻撃については組織力と個人技を兼ね備えた好チームだと思う。それゆえ、ゴール前の精度を欠いたベルバトフが戦犯になってしまうかもしれない。そのくらいチャンスはあった。守備に関しては、さすがに3点も入ると「それでも良かった」とは言いづらい。にしても後述の通り、先制点と追加点が、1試合で出来てしまうには惜しいくらいスーパーな展開からだったのも確かなので、守備への評価は正直難しい。3点目のポカはさておき、決して悪くなかったと思う。
一方のクロアチア。98年フランス大会で日本と対戦したとき以来で久々に見たが、そのときに感じた「重厚さ」は健在。ブルガリアの素早いパスワーク、鋭いフィード、しつこいドリブル突破などに動じず、抜け出されても最後でガチっと守りきる堅い守備は、ドイツっぽさを、カウンターでの先制点がファーストチャンスという、虎視眈々ぶりと勝負強さ、決定力の高さなどは、ブラジルやアルゼンチンのような抜け目の無さを感じる。すごく誉めすぎかもしれないが、そのくらい、いいところの出ていた試合だと思う。クロアチアのゴールは3点とも近代サッカーっぽい良い展開だったので、ちょっとだけ分析っぽく述懐。
1点目は前述のようにカウンター。左から入ったグラウンダーをセンターで一端受ける。その選手を追い越したバビッチが、グラウンダーをまたぐコースを走ってスペースへ飛び込み、ショートパスを受ける。そして、タイミングだけでコースを狙ったようなシュートを放つ。絵に描いたようなオープン攻撃と、縦のポジションチェンジ。そして、競り合いながら、たまたま左足の方が打てる姿勢にあったから、とでもいうような無理な姿勢からでの、しかししっかりとしたコントロールシュート。
2点目もカウンター気味。右からのセンタリングを、裏で受けた選手がシュートと見せかけて再び中へ高速グラウンダーで折り返し、なんとセンターバックのトゥドルがインサイドキックでダイレクトに狙う。こちらも、早くDFを揺さぶった上で、マークの付きづらい後ろの選手の攻撃参加によって、シューターが完全にフリーになっていた。
3点目は個人技。ブルガリアMF(DFかな?)のボールを奪ったクラニカルが、慌てて寄せた別のDF(ストヤノフだったかな)を素早い切り替えしの股抜きで振り切り、飛び出してきたGKの位置を見て狙いすまして、強力なインサイドキックでのシュートを決めた。相手に急に寄せられたときのイメージを持ち、チャンスと見るやゴールへ真っ直ぐに挑む。若い選手らしい思い切りのよいゴールは、クラニカルの代表初ゴールだそうだ。
クロアチアのゴールに共通するのは、奪ってからの攻守の切り替えのスピードの速いこと。とにかく「チャンスなんだから点を取る!」という強力な意思が噴き出てくるような素早い攻撃は迫力がある。まー、とにかく、技術が無い、攻守の決め事が無い、基本的な戦術眼が無い、連携が悪い、スピリットが足りない、などといった諸問題を抱えながら、なんとか、ほうほうの体で予選を突破しそうな我らが代表チームと比べてしまい、ため息の連続だった。選手名に良くわからんところがあるのはご容赦くだされ。さて、我らが代表はどうなることやら。