vs イラン(BS1/地上波)

ドイツ大会アジア地区予選最終戦。当然ながら、欧州はシーズンインしたリーグもあり、双方ともに欧州のリーグに参加している選手は招集せず、自国リーグの選手で代表を編成してきた。勝負の世界での話になれば、借りを返して1位突破、というのが至上命題なのだろうが、実際はメンツの問題だけで、1位になったからどうだってことはない。公式戦でありながら、とてもエキシビジョンマッチに近いという、不思議な性質を持った1戦となった。
結果から言えば、きちっと借りを返しての1位通過。本大会があるので、お疲れ様、ではなく、おめでとうございます、としておく。PKを献上したのはいただけないが、選手層の厚さを見せつける結果となった。とはいえ、トップチーム同士になると、イランの方が一歩リードしているかもしれないなぁ…という点は否定できない。「戦力値」というものを100をMAXとして血圧みたいに表現したとすると、日本が70〜90なら、イランは60〜95という感じがするのだ。下の数字は主力抜き、上の数字はベストメンバーでの数字となる。つまり、日本は戦力がガタ落ちすることはない代わりに、トップチームの戦力はまだ安定して世界レベルにある、とは言えないということ。
というわけで、個々の評価へ。

川口能活:GK
問題なしの文句なし。ハイクロスにも、ミドルシュートにもきちっと対応して見せ、バックパスも危なげなく処理。決定機はダエイの放ったインサイドでカーブがかかった1本のみ。あれはダエイが上手かったし、ポストに助けられたが、ノーチャンス。むしろ、PKの方が止められそうだったので、残念。

田中誠:DF
このレベルでは、文句なく安定株。変な判定でFKを献上することはあったが、信頼度はトップクラス。左サイドが主戦場だったのと、加地が前でふんばったことなどがあり、あまり活躍の場面は無し。この予選で、完全にレギュラーに定着した。

宮本恒靖:DF
良い宮本。ポカもなく、ヘロっとしたプレーもなく、終始安定。鬼の形相で指示を飛ばし、笑顔で鼓舞をする様子は、絶対の自信(どの辺が自信の根拠なのかは分からんが…)を持ったような堂々としたもの。上背をカバーするように、ハイボールでは上手く落下点を抑えてゴール前を押さえる。

中澤佑二:DF
完璧…ではなかったし、復調…とも言い難い。そこかしこで、「あれ?」と思うようなイージーで詰めの甘いプレーが散見された。にしても、主戦場になった左サイドで高めに位置し、広い守備範囲を生かして簡単に裏を開けない堅実ぶり。空中戦も、敵はダエイくらいという強力さを披露す。終了寸前の、CKへ飛び込んで大黒とかぶったシーンは、その「調子」を表していたような気がする。

加地亮:MF
世界レベルとアジアレベルを行ったり来たり。積極性はあれど、無理をしないので、アグレッシブに見えず。突破をはかっても、なんとなーく真剣さがたらないような、ふら〜っとしたダッシュで、あまり効果的ではなかった。とはいえ、この試合最大の仕事は先制点。なぜあの場面、あの高さに加地が走り込んでいたのか?というのはさておき、攻撃参加への意識が高かったということを評価しておきたい。

三都主アレサンドロ:MF
過去の試合と比べれば良い出来といえる。少ないタッチでクロスをあげ、つなぎが早く、このところネックになっていた「三都主にボールがわたると停滞する」という悪い現象がぱたっと無くなっていた。それが、左サイドでの攻防で、日本が先んじることが出来た要因かと。なんだかんだで、フィニッシュとかクロスで攻撃が終わるのと、途中でターンオーバーするのとでは、前者の方が良いに決まってる。鋭いミドルシュートや、良いリスタートもみせ、攻撃においては一応は合格点。意識がここにあれば攻撃は問題ないので、課題の守備を何とかして欲しい。

遠藤保仁:MF
「大黒センサー」でもついているのかと思うくらい、スペースへ流れる大黒へ、的確に長いフィードを供給。「ガンバホットライン」は、浅いイランのディフェンスラインの裏を何度も取り、立ち上がりの日本のリズムを作った。体力が落ちたことを理由に(だと見えた)ジーコが今野と代えるまで、攻守で貢献。目立ちはしないが、良い仕事をしていた。立ち上がりの長いシュート、あれが枠に飛ぶようになるともっと良いのだけど…。

福西崇史:MF
派手なプレーはなく、遠藤と中盤の底を固め、後半の半ばまでは、バイタルゾーンをほぼ完封したことで、イランは、外をチョロチョロと上がるくらいしか攻め手が無かった。文句なし、と言いたいところだが、遠藤と2人で、もっと小笠原を追い越していくシーンが欲しかった。が、それは小笠原のところで。

小笠原満男:MF
相手が落ちて簡単にプレーできるとなると、とたんに動かなくなる。かつて小野が「パス地蔵」と呼ばれたが、まさに地蔵。気が向いたときに少し追うくらいで、攻撃でチャンスになるまで雲隠れ。このため、遠藤や福西があがるタイミングがほとんどなかった。少し前に突っかけた遠藤が、目の前の小笠原をすっ飛ばして、奥で張っていた大黒に当てて上がっていったという、象徴的なシーンが1つあった。こういうことでは駄目でしょ。満男さん。セリエに行ったって通用しないよ。

玉田圭司:FW
今日はアシストを記録したことと、交代まで走り回ったということで、印象には残っていた。決して良くはないが、復調はしている模様。現に、アシストとなったセンタリングの前のステップワークは、とても「らしい」プレーだったと思う。冷静に見ていて思ったが、もしかしたら、この人はウィング(ハーフでもディフェンスでもない、FWとしてのウィング)があってるのかも。自分が切れ込むというより、外から突っ込む感じ。ドリブル上手いし。三都主の代わりに、高めの外で張らせると面白いかもなぁ、と妄想に浸ってみる。

大黒将志:FW
追加点は執念が生んだものか。東アジア大会ノーゴールの仇を取った感じ。遠藤との「ガンバホットライン」効果で、画面に映る回数はチームトップだったかも。とにかく、浅いラインの裏、裏、裏という具合に飛び出し、出足の良いGKとの接触も怖がらずにガンガンと攻める。シュート自体は、得点以外だと、ペナルティエリアすぐ外からダイレクトで放った、流れの中からの1本だけが印象にある。あと10ヶ月で、柳沢や高原らの牙城を崩せる存在になれるか、はたまた、スーパーサブに定着するか…。

今野泰幸:MF
遠藤と交代で後半に登場。短い時間ながら、行動半径と守備範囲の広さ、読みの良さ、そして球際の強さを見せる。詳しい評価は難しい時間なので、以上。

阿部勇樹:MF
守備固めのためか、かなり遅い時間に投入される。ほとんど絡まないままタイアップしたので、評価は無し。

これにて予選が全て終わり、これからはドイツ大会へ向けてメンバーを絞り込んでいくことになるわけで。全くのご破算にして、というわけではないにしても、ジーコは肩の荷が下りたことで、東アジア大会で見せたような、大胆なメンバーを招集する可能性もある。近いところではホンジュラス戦があり、ここで誰が呼ばれるかによって、ジーコのプランが見えてくると思う。