富樫洋一さんが亡くなる。

ジャンルカ・トト・富樫、こと、富樫洋一さんが取材先のアフリカで亡くなった。
会ったこと無い人の訃報では、「あー、そうなんだ」くらいしか思わないのがいつもなのだが、今回は違う。会ったことは無くても、こちらからは一方的によく知っていたのもあるが、サッカーに関わる生活を考えると、欠けてはならない大事な人だった。ゆえに、ショックは大きい。いまだになんと言っていいか分からない。お悔やみ申し上げます…違う。冥福をお祈りします…違う。さようなら…違う。宮様に続き、日本サッカー界は、惜しいというにはあまりにも大きな人材を失った。
サッカーに対する愛情が、行間から、言葉の端々から、表情から、絶え間なくあふれ続けてくる人だった。有名人のゴシップからマイナーなチームや国、新進気鋭の若手選手まで、常に何かしらの情報を持ち、それを惜しげもなく提供してくれる稀有な人だった。特に、日のあたりづらいチームや人にスポットを当てるのを使命とさえ感じているような仕事振りが印象的だった。かといって、記事や解説が分かりづらいかというと全く逆で、ライターから出発したジャーナリストとしては珍しく、両方とも上手いという才能もかけがえの無いものだった。そして何よりも、システム論などをしたり顔で述べることなどせず、サッカーの真の姿、本当の楽しさを伝道して回ったという功労は他の人にはないものだと思う。
ファッションの変な派手さや、1ファンに成り下がったような解説、スタンドの観客やカメラワークにまでコメントするお茶目さ、寒い駄洒落などが原因で嫌う人もいるだろう。しかし決していいかげんな仕事はしていなかった(と思える)。サッカーが日本でメジャーになっても、自分の立つ舞台が派手になっても、インテルスクデッドに見放され続けても、寒い駄洒落をスルーされても、約20年前手に取った記事から、明るく楽しいというスタイルを変えなかった硬派な人だった。
もう、その記事も解説も楽しむことができないと思うだけで、悲しいを通り越してしまう。まだ何を言うべきかわからないでいるけれど、間違いなく言えることはある。長い間、楽しい記事と解説で楽しませていただき、ありがとうございました。