ドイツvsコスタリカ(BS)

2006年ワールドカップのオープニングゲーム。このところ、格上だと目されてるチームが不覚をとるケースが多いため、かなり注目の一戦。コスタリカは、大事をとったバラックを欠くドイツを跪かせることができるのか。下馬評はもちろんドイツ優勢だが、よく見るとコスタリカにサプリサ所属の選手が多い。そうか。サプリサってコスタリカのチームだっけ。

立ち上がり、ドイツはものすごい勢いでガンガン飛ばす。その勢いのままに早々と先制。左サイドのラームが切りこんで、難しい角度からゴール右上隅へファインゴール。ドイツの左サイドは、このラームとシュバインシュタイガーのコンビがよく機能し、試合を通じてチャンスの基点となった。
ところが、日本戦を見て分かるように、今のドイツの守備は堅牢とは言い難い。経験不足が指摘されるディフェンス陣は言うまでもなく、信頼があるはずのレーマンがどうも集中力に欠けているという感じが…。というわけで、コスタリカの同点ゴールはディフェンスラインの乱れから。オフサイドトラップをかけそこなった隙をついて抜け出したワンチョペが、レーマンとの1vs1をあっさり制してゴールに流し込む。人によってはオフサイドの判定をするかもしれないくらい、ギリギリのタイミングの飛び出し。やや峠を越えたとはいえ、ドイツは後半にもワンチョペのおかげで冷や汗をかくことになる。
先制点が早くても同点弾がすぐに決まると膠着状態になりがち…と思いきや、わずか5分後に、ドイツの右サイドのシュナイダーから、シュバインシュタイガー→クローゼとつながってドイツが1点リード。
ここまでの展開をダイジェストにしてしまうと非常に落ち着きがない感じだが、ややちぐはぐさはあるが、素早いパスとドリブルを効果的に選択して攻め続けるドイツと、ほぼ5バックのように最終ラインを固め、隙あらばドリブルとショートパスでのらくらとドイツのプレスをかわしつつ前進するコスタリカという様子。立ち上がりこそややピンポンのようだったが、急激にシーソーのようにあっちこっち、というわけでもない。前半はこのまま終了。クリンスマンは「ホントは日本じゃなくて南米とやりたかったんだよ」みたいな泣き言(?)を言ったらしいが、日本に2点食らって目が覚めてよかったじゃないか、という気もする。攻撃は良いのだけど…やっぱり守備に不安が残る。一方のコスタリカは、全く手も足も出ずというわけではなく、虎視眈々、という言葉があう。確かにドイツ人のリーチに苦労している感じはうけるが、当たりの強さという意味での体格的なハンデは感じない。したたかさも感じる。なんとなく「さすが中南米のチーム!」という感想。

後半になっても「攻めるドイツに守るコスタリカ」に変化はない。ドイツは欧州のトップクラスのリーグに参加するクラブでプレーしている選手が多く、個も組織もしっかりしている。ちゃんとやればかなり強いはず。一方のコスタリカは、名の知れた選手はいるものの、連携や体力的な面に難があるようで、なかなか前に進めなくて苦労している。個人個人の即興的な判断でボールを回し、穴を作ってパスを通すという、言ってみれば「小さいメキシコ」のような感じ。戦術レベルが高く、フィジカルコンディションがよかったら(簡単に言えばメキシコだったら)、ドイツは相当やばかったような気がする。エクアドル戦は、このままだと「もしかする」かもしれない。
閑話休題。16分に、クローゼが2点目をあげて差を広げるものの、前半と似たような形で再び1点差に追いくのだから、コスタリカは決して弱くない。ポテンシャルはある。やや皮肉だったのは、それまで動きのなかったコスタリカベンチだが、負傷したマルティネスをドルモンドに変えたことが2点目のきっかけになったこと。ドルモンドが右サイドで奪い返した後、ドリブルであがって粘りながらつなぎ、そこから左へ動かし、ぽっかり開いた中へリターンしたタイミングで、ワンチョペが抜け出してスルーパスを受けた形。ドイツがディフェンシブハーフのボロフスキをケールに変えた直後の失点だったことから、各選手の位置確認をし直していたところをついた、ともいえるかもしれない。
それにしても、だめ押しのフリンクスのシュートはすごかった。「チームの心臓」という言葉がぴったりあう活躍でバラック不在の中盤に腰を据え、積極的に前へ飛び出すというよりも、深い位置からボールをさばいてチームを支えた。この試合の貢献度の高さに対するご褒美、という感じのスーパーゴールだった。とはいえ、前半にも似たような距離のきわどいミドルを放っているので、リハーサル済みではある。そう。以前は、自分が得意な形のリハーサルが1回あれば、次はきちっと決めてみせるってのが「プロ」だったんだけどなー。いつから精度が下がったんだろう?そういう意味でも、フリンクスの今後に期待。

結局、近年まれに見る殴り合いとなった開幕戦はドイツが下馬評通りに勝利を納めた。コスタリカはコンディション不良という感じで、パタッと足が止まる時間帯があった。これがなければ…と感じるということは、期待できる好チームになる可能性はあるといっていいかもしれない。乱打戦になったのでしまりは無いのだけど、眠い目をこすりつつ楽しめたゲームではあった。MOMはクローゼらしいけど、個人的にはラームかな。やはり、サイドバックながら立ち上がりに勢いを与えた先制点をマークしたのはもちろん、アシストやチャンスメークで完全に左サイド(コスタリカの右サイド)を制圧していたといっても良いんだけどな。開幕戦だからこそ、アタッカーではなく、見えづらい貢献度を評価すべきだったんじゃないかと。