イングランドvsパラグアイ(BS)

優勝候補の一角にあげられるイングランドと、チラベルト引退後もパワーダウンすることなく、堅守速攻で南米4位となり、堂々の連続出場となったパラグアイ
イングランドは、ルーニーを欠くものの「あ、ルーニーがいたんだっけ」と忘れることができるくらいの豪華布陣。特筆すべきが、ボールを失うことはあんまり考えてないんじゃないか?とさえ思える、ディフェンシブハーフの専門家をおかない超攻撃的な中盤。ランパードは確かにセントラルミッドフィールダーとして優秀だが守備が抜群に上手いわけではない。右はベッカムで左はジェラード。トップ下はジョー・コール。それぞれそこそこ守備が上手く、ボールが持てる選手ばかり。つまり、どこに対しても圧倒的なポゼッションサッカーをするという明らかな宣言といえる。が、オーウェンが消え、クラウチがほぼ無効にされ、ベッカムのクロスは入れさせてもらえず、ジョー・コールのドリブルは妨げられ、ランパードのミドルがことごとく弾かれ、ジェラードが上がってこれないのでは、さすがのイングランドに攻め手はない。悪いところは無かったと言って良いのだが、結局しのがれてしまった。勝ち点3という結果は、初戦ということを考えれば十分な結果だが、自分たちの手でゴールをこじ開けられなかったのは、今後に向けての不安材料か。
一方のパラグアイは、DFのガマラ、MFのアクーニャ、FWのロケ・サンタクルスと、バランスよくタレントがそろい、1本背骨が通っている感じ。その堅守がどこまで食い下がれるか?が試合の興味だった。ところが意外や意外、他にもなかなか良い選手がいるではないか。DFのカセレスのボール奪取の上手さ。パレデスの泥臭く、休むことのない走力と闘争心。ロケ・サンタクルスのパートナー、ネルソン・バルデスのつっこみの鋭さ。精度はないが、このネルソン・バルデスの位置取りは、イングランドにとってとんでもなく嫌だったに違いない。さらに、後半になってMFボネットの代わりに入ってきたFWクエバスのテクニックの高いこと。精度と決定力が上がれば、かなり強いチームになりそうだ。そして、DFの守り方の上手さは特筆ものだ。あのクラウチにゴール前では、足下はもちろん、ハイボールでさえほとんどフリーでボールを触らせなかったのだから。身体を当て、落下点を先に押さえ、タイミングを計り…ホントに上手い。

先制点にして決勝点のシーンは前半早々に訪れた。イングランド主将のベッカムが蹴ったFKに反応し、パラグアイ主将のガマラが競り勝ったのがOG。しかもその直後、ゴール前のシーンでGKビジャールが負傷し、ボバディージャに変わらざるを得ないという、珍しいくらいの不幸がパラグアイにのしかかる。ここでたたみ込めなかったのが、イングランドの甘さと見ても良いが、パラグアイ伝統の堅守が発揮されたともいえるかもしれない。負けてなお強し、の印象がある。やはりここは死のグループの1つだ。

イングランドが攻めて、パラグアイが守るという戦前の予想通りではあったが、パラグアイがそれだけでは終わらなかったことで、地味な結果ながら内容のある好カードだったと思う。世界は広い。W杯は甘くない。ホントに良い試合だった。