vs中国(地上波)

久々の女子代表の試合を楽しみに見始めるが、気に入らないことが2つあった。中国の試合に北朝鮮の副審を当てるというAFCの無神経さ。何もなかったから良いが、北朝鮮なんて中国みたいなもんだろ。とかいうと、文句言われるだろうなぁ…。どちらにせよ、東アジアの国同士なんだから、東南アジアの審判勢で固めても問題無いだろうに。もう1つは仕方無いんだが…テレ朝が中継ということ。選手名を言えない角澤、テンションが上がると解説から指示になってしまう大竹、誰でも分かるようなことしか言えない堀池(唯一距離感の話をしたのがこの日一番の仕事か)。角澤+松木よりはマシだが、実況席にいる必然を感じない面々。案の定、綺麗事と美辞麗句の並ぶダメ実況と、退屈な解説の垂れ流し。ああ、AFCの権利をどこか他の局へ売ってくれ…お願いだ…。
で、試合の内容は、というと、日本が辛勝ながら久々の対中国戦勝利。とはいえ、ピッチにいた人で前回勝ってる人はさすがにいないわけで、やってる人たちにはあんまり関係ないですわな。
とにかく守備が良かった。ドイツW杯で目についたのだが、ダイアゴナルランによる崩しに対抗するには、守備ブロックを崩して「フルコートマンマーク」へ移行することが相手のチャンスを摘むために非常に有効だった。もっとも顕著な例を挙げれば、攻め上がる守備的MFやセンターバックを、攻撃的MFやFWがそのまま追いかけて戻るというもの。動きの速い相手に守備ブロックを崩すのは難しいのだけど、必ずつぶすことができればそこでプレーが止まるので怖くない。この形を日本代表は忠実に遂行していたのが良い結果を生んだ。危ないシーンは幾度かあったものの、この試合はまさに理想のリズムだったと言えよう。
では個々の感想へ。

福元美穂:GK
とにかく良く守った。前半に1回こぼしたがあわてずに処理。ミドルシュート、センタリング、スルーパス。すべてのプレーへの対応を忠実にこなし、安心できる堅実さ。特に、ハイクロスやハイボールにはほとんど触れているのが心強い。欧州の上背のある選手に対抗できるかわからないが、こういうプレーは間違いなく必要になってくる。あとは、低めのフィードで攻撃の基点になることを意識すれば、山郷をベンチに座らせたままにしておくこともできるだろう。
安藤梢:DF
チャンスをうかがって攻め上がるシーンはあったが、特に回数が増えた後半のコンビネーションがあまり良くなく、効果的とは言えなかった。その代わり、センターや逆サイドまで良くカバーリングに走り、守備になれてきた感じ。
矢野喬子:DF
安藤より前目にいて攻撃の機会をうかがっていたが、効果的に出て行けたのは後半になってから。悪いことではないのだけど、永里などが左の前に流れるとき、どういうコンビネーションで前に出て行くか、スピードを落とさないですむか(もしくはわざとペースを変えるか)などをどう工夫するかが課題か。ボールが扱えるだけに、深い位置からのパスだけでは、なんとなくもったいない。
磯崎浩美:DF
この試合、鬼神と言っていい働き。穴をきっちり埋める。仲間と追い込む。挟み込む。カバーする。足1本で間に合わせる。身体をなげうつ。見事としか言いようがない。フィードをすればきちんとつなぐが、危ない場面では躊躇せずクリアする思い切りの良さも良かった。もっともこの試合、守備陣はもちろん、日本全員の守備意識が高く、結果として中国に点を許さないで済んだ。
下小鶴綾:DF
磯崎とセンターをつとめ、きっちりシャットアウト。特に、守備範囲の広い磯崎の裏をしっかりと固めてセンターを空けないようにラインをコントロール。この場合のラインコントロールとは、オフサイドトラップを積極的に狙うものではなく、MFとの距離が間延びせず、GKとの間を不用意に空けないようなコントロールをしていたということ。このおかげで中盤が追い込んできた相手をDFラインで潰すことに成功していたと思う。中岡が中盤のバランサーなら、下小鶴はディフェンスラインのバランサーといったところか。
柳田美幸:MF
FKで宮間の先制点をアシスト。貴重なレフティとしてボールを散らし、とにかく守備に貢献。サイドバック(特に矢野の裏)をカバーし、中国のワイドな攻撃をことごとく防ぐ他、ドリブルで切り込む相手に振り切られずに付くという忠実な守備を続けた。また、後ろ目からの出足もよく、ターンオーバーのきっかけも多かった。前目でボールが持てたとき、もう少し自信を持って「自分が中心で」くらいの勢いで攻撃に参加していけると、澤が楽になるかもしれない。
澤穂希:MF
攻撃隊長のはずだが、かなり守備にも意識を割いて貢献。ほとんどボランチと言ってもいいくらいの深さに戻り、攻撃ではいつもの位置へという運動量。攻撃では穴をつくことを心がけていたのか、ワンタッチプレーが多く、強引な突破は数えるほど。もちろんエースなだけに挟まれるプレーが多く、そこを自覚しての軽快なボールさばきだったのかもしれない。周りを使って侵攻していく様子を見るに、何をすれば良いのかはきちっと把握しているようなので、周りとの連携を強化していきたいところ。欲を言えば、ミドルシュートの精度が欲しい。後半はちょっとお疲れ気味。
中岡麻衣子:MF
バランサータイプのMFなのか、ボールの位置に顔を出すというより、その周りの抜けた部分をクルクルとカバーして回ってるような動きが多く、前半は画面に映りづらかった。後半になっては、ポジションを上げたのかセンター気味に、コンダクター的なプレーを披露。もう少し酒井と勝負できるくらいの捌き方ができるといいかな…。特に苦しい時間帯にそれができると頼もしい。ともあれ、他のMFやサイドバックがガンガンと前へ行けるのは、この中岡の動きがあったからと言っていいかも。バイタルエリアを空けない忠実さはホントに貴重。
宮間あや:MF
先制点のきっかけとなるFKを得て、そこに飛び込んで先制点にして決勝点をマーク。この後、これ以上に目立った活躍はないものの、守備と攻撃をつなぐ、カウンター、ルーズボールを追い回す、ような場面でよく走る。運動量だけでなく、動きの中や密集でもきちっとボールを扱える良選手。
永里優季:FW
まだまだ雑な部分はあるが、よくポストをしていたと感じた。FWで縦パスが収まるとMFの押し上げが期待できるし、全体として少し息をつける上、ペースを変えて流れを引き込むことができる。また、スペースへのロブにもよく反応し、サイドへ流れてボールを拾うシーンも多かった。周りとのコンビネーションも文句ないが、課題は、こういう強い相手のときに、多少強引でもシュートまで持って行くプレーを出すこと。ミドルではなく、切り込んでね。
大谷未央:FW
先発でほとんど見せ場のないまま、大野と交代。戦術的な理由なのか、怪我があったのかは分からず。ちょいと残念。
大野忍:MF
ドリブルはキレキレ。男子かと思うくらいキュキュっとしたドリブルと、ボディバランスの良さが持ち味か。もう少しスタンスの長い相手との間合いに慣れれば、必ず良いアクセントになる。前への意識も高く、MF登録だが、ほとんどセカンドトップ扱い。果敢にドリブルで仕掛ける他、横へ流れながらドリブルしたり、永里と逆位置を取るようにポジションを変えるなど、運動量とポジショニングにも優れる。良い意味でミスをおそれない選手。
阪口夢穂:MF
ロスタイムに入って大野と交代で出場。忘れないようにメモしておくと「みずほ」と読むそうだ。時間が短すぎて詳しくは分からんが、ワンタッチではたいたシーンを見る限り、技術は高そうだ。大橋監督はホントにスキルのある選手で固めたんだなぁ。

中国は前評判に違わない総合力を持ったチーム。フィジカルコンタクトやスピードはかなわない日本は、集中力と組織力、そしてボール扱いの確かさで対抗して勝利してみせたのは見事。技術のある選手が戦う意識を持ち、考えながら個々の良さを生かしつつそれを融合させて戦う組織となる。…うーん。なんとなくだけど、ジーコがやりたかった形がここにあるんじゃないか?という気もするし、オシムならこういう代表になるんじゃないか?という気もする。毎回試合を見るたびに思うが、女子代表は完全に作っちゃったよな。A代表があれだけほしがってる「スタイル」ってもんをさ。

しかし。この試合だって日本代表なんだから、簡単なスタッツくらい紹介しようぜ、日本サッカー協会さんよぅ。メンバー、得点経緯、シュート、GK、CK、FK、警告、退場くらいは出せよなー。