オシムさんへの姿勢。

あれこれと批判や賛同が出てきたが、結局「オシム応援派」と「人気者にはネガティブ派」が目立つ。あとは傍流として「川淵ヤメロ派」がある。*1
一人でぶつくさと書いているだけではいるが、カウンターを見る限りでは、訪れてくださる方もいらっしゃるので、僭越ながら、このブログでのオシムに対する姿勢を表明しておくと…

オシムには超期待しています。

となる。不安なところはある。旧ユーゴ代表を率いた経験があるとはいえ、あのチームには、若き日の超一流プレイヤーたちが集結していたハイレベル集団だったわけで、その尻尾がつかめる高さくらいまでには、レベルアップできるんだろうか、とか。
グラーツや千葉での成績は、一緒に活動する時間が長いクラブでのものであり、時間が限られる中、不慣れな通訳を介して、普段バラバラなことしている選手たちに考えを浸透させ、まとめることができるのだろうか、とか。

恐らく普通に考えて、集団で行動する場合、明確に方向性が示された方が上手く機能するし、約束事が多いほど、スムースに回転する。と言うと、ファンタジスタ好きな方々は、眉をひそめて「また縛るのか」と考えるかもしれないが、ちょっとだけ聞いていただきたい。
方向性というのは「こうやって戦おう」という意識統一に他ならない。*2「こんなとき、どうするよ?」ということをあらかじめたくさん想定し、(納得する・しないは別にして)やるべきことを決めることで、余計なピンチを回避しつつ、より多くのチャンスをつかむ可能性が上がると考えられる。特に守備面では「やってはいけないこと」と「やるべきこと」が、攻撃に比べてかなり整理されている上、個人個人の力がベースとはいえ、コンビネーションやディシプリンの整備によって、充分戦えるレベルまで底上げしやすい。問題は攻撃面だけど、これも基本となる「すべきこと」はあり、それをしないから、なかなかゴールが生まれないということでもある。一例を挙げれば、先日のイエメン戦で、羽生が走り回ってマークのズレを作った。「攻撃時の硬直化」は、日本だけでなく、欧州のトップクラスの国、クラブでも起こりうる現象で、面白いのは「ベッタリ引いて守る格下」との試合で、その硬直化が解消されずに、スコアレスドローで勝ち点をなかなか伸ばせないという結果を招く。これも、選手個人個人に「動いてマークを外せ」「スペースを突け」ということが浸透して実行できていれば、全員で相手を崩していけるようになるはず。もちろん、そのためのすばやいパス交換や、機を見てのドリブル突破などの判断とそれを実行する技術の高さも欠かせない。が、それは代表ではなく、クラブで個人個人が磨くことですから、ここでは突っ込まないことにする。

というわけで、オシムファンタジスタがキライだ、と見えるかもしれない。が、思い出していただきたいのは、我々が押しも押されぬファンタジスタとして絶賛したストイコビッチを使いこなし、そのストイコビッチたちから尊敬されているのもオシム。そもそも、ファンタジスタは使わないなんて、一言も言ってない*3。ぶっちゃけて言ってしまえば、オシムの考えに沿うように働く選手なら、どんなタイプの選手でも招集される可能性がある。自身も発言している通り、「結果が求められる」のであれば、自分が信頼できないタイプの、考えを変えない(自分の考えに同調しない)選手を、どうして手元におけるのか?慈善事業ではないプロなのだから、自分が信じられる、可能性の高い方法を採るのは普通のこと。なぜ、稲本はWブロムで、中田はペルージャ以外のチームで、高原はHSVで、柳沢はイタリアの2チームで不動のポジションを獲得できなかったのか。それは、監督の構想でレギュラーメンバーとしてフル出場することを任せられない、という判断があったことは想像に難くない。代表でも同じ事で、監督が信頼できないなら、招集はされない。

また、http://doroguba.at.webry.info/200608/article_16.html で、「オシムモウリーニョに近い」と、上手いたとえをしておられるが、「好々爺に見えるプロの勝負師」が、イビツァ・オシムという人なんだと思う。見た目に騙されて(?)はいけない。勝負にこだわる硬派な面があることを、木村氏の著書を読んだ方なら十二分に理解してるはずだと思う。

えらそうにイロイロ書きましたが、今までのやり方や発言をおおむね指示しつつ、過大な期待はせず、過敏に反応せず、マッタリと見て行きたいと思います。

…あ、川淵さんとか言う人はけじめつけて欲しいっすね。

*1:長沼氏のときもヤメロ騒動はあったけど、サッカーに深く関心を持つ日本人がこれほど多くなかったから、さほどの事件ではなかったけれども

*2:攻撃陣が「攻めきれるから押し上げてくれ!」と考え、守備陣が「いや、もっと引いて守りたい」と意見が食い違ったことで空中分解したアトランタ代表が良い例ではないでしょうか

*3:「今のサッカーで求められているのは美しさではなく結果だ」という内容のことは言ってるけど、それが、即、「ファンタジスタ外し」と結びつけて声高に報じるマスコミのこじつけには辟易する