vsイエメン(BS)

アジア杯予選の2試合目。まー、少しばっかり代表戦を見てきた人であれば、どう見ても格下と言ってしまいたくなる相手ながら、中東のチームには手こずるのが日本。そんなに簡単に勝てるとは思わない相手なんだけど、さてどーなることでしょうか。というのが戦前の状況。
結論から言えば、オシム自ら「魔法使いじゃない」というような発言をしていた通り、そんなにいきなり強くなるわけがないのだけど、見ていて意図や方向性が分かる分、ジーコのチームよりストレスが少ない。それは批判ではなく、ジーコはとにかく選手任せだったから、選手の考えが分かるエスパーでも無い限り、分かるわけない。オシムは、普段からメッセージ性の高い情報発信をし、それが実にシンプルで理論的なため、分からない方がおかしいくらいだから、という差で、どちらが優れているということはない。
脱線したが、試合内容は「硬直の前半、苦悩の後半、覚醒のロスタイム」という感じ。前半を見る限り「なんだよ。前と変わってないじゃん」という感じがした。ボールを動かして崩そうという意図が見える分マシだが、相変わらずミドルシュートも無ければ、強引はドリブルも、しつこいセンタリングもなく。後半になって羽生が入り、彼がリズムに乗ってから、ようやくオシムが求めている内容にちょっと近づいた。で、イエメンの選手が所々で悶絶していたせいで6分もあったロスタイムあたりは、完全に目が覚めた。ちょっと遅すぎでしょ…。
というわけで、手堅く2−0でイエメンを下したわけだが、流れの中からの点が無いというのが、まだ時間がかかることを暗示しているような気がする。それでは、個々の感想へ。

川口能活:GK
前の試合同様、数本のボールをさばいたくらいで、ほとんど仕事らしい仕事は無し。ゆえに、評価すべきことは全く無し。

駒野友一:DF
サイドバック扱いではあったが、高めにポジションを取り、攻撃に手を割く時間が多かった。良くボールに絡んでいたけども、前半だけの出場で羽生と交代。何が悪かったというよりも、調子のいい人、期待したい人からの消去法だと思う。*1

加地亮:DF
前半は右サイドが使われることが多かったのと、イエメンがべったり引いていたので、前のスペースに遠藤や三都主、流れてきた達也がいても、攻撃参加できていた。後半は更に前にいることが多く、サイドバックながら攻撃への貢献が目立った。

田中マルクス闘莉王:DF
イエメンが引いて守り、攻撃に手数を割かなかったため、機を見てはスルスルと前線へ上がって、浦和で見るように頻繁に攻撃参加。惜しいシーンが回数に比べてあまりに少なかったのは、すごくもったいない。

坪井慶介:DF
闘莉王が上がるため、どっちかというと守備専念。後半に阿部が最終ラインに入った時間帯では、ほとんど2バック状態で待機。とはいえ、セットプレーでは啓太に任せて、闘莉王ともども前線へ。このくらいの相手では、さすがに後れを取らないのだから、つなぎだけでなく、早く、チャンスになるようなフィードが入れられると良いんだが…。

鈴木啓太:MF
この試合は浦和と同じく闘莉王の保護者。攻撃では割と遠目のシュートなどが多く、他の選手からこぼれてくるところを広くカバーしていた感じ。オシムの言う「水運び」を一番忠実にやっていたと思う。

阿部勇樹:MF・DF
ずいぶん遅い時間帯だったが、貴重な先制点をマークしたことは記しておかなくてはいけない。前半はディフェンシブMFとして、後半はフォアリベロとを兼任する器用さと、落ちない運動量、チャンスメイクを行える位置まで進出するなど、千葉での存在感と同レベルのプレーを披露。

三都主アレサンドロ:MF
CKから先制点となる阿部のゴール、FKから追加点となる寿人のゴールをアシストしたのは良いが…。さすがに前回は出来すぎだったのか、これ以外さして良いところがなく、ドリブルで完全に振り切ることもなく、パスを受けても球離れが悪く、しつこく上げていたクロスも精度が悪く…といった具合。なんだよ。前のモタモタ三都主に逆戻りかい…。

遠藤保仁:MF
うーん…。存在感無いなぁ…。走れないとこれだけ目立つ(正確には目立たない)チームになっちゃってるんだな、今の代表は。しかも、前半は流動性がまだまだ足りてなかったのに動いてない感じがするってことは…少し考え方を変えた方がいいかもしれない。後半になって、勇人と交代。

田中達也:FW
なかなかパスが突っ込まれないので、外に動いたり、引き回したりして、よくパスを引き出す動きをしていた。それでも前半はその努力が無駄になるケースが多く、その動きに結果がついて回ったのは、羽生が入った後から。何度もペナルティエリア近くでひっかけられてFKをゲット…したのに、誰も得点へ結びつけられず。良く動いてただけに、なんかかわいそうな感じがした。まぁ、シュートの精度は反省の余地はあるけども。

巻誠一郎:FW
完全に制空権を取っているはず…なんだけど、センタリングの精度が悪いわ、巻自身のポジションニングが甘いわ(身体の張り方も含め)、ヘディングの精度は悪いわ…と、今日は全く巻の日ではなかった。

羽生直剛:MF
駒野に変わって後半頭から出場。立ち上がりこそ、やや緊張した感じだったが、だんだんとリズムを取り戻す。特に、ワンツーで中へ切れ込んで行ったプレーは圧巻で、得点にはならなかったが、チームにグッと流れを引き込む良いプレーだった。その後も質の高いムービングで流れを保つ。

佐藤勇人:MF
遠藤に代わって後半から出場。少ない出場時間ながら、日本に流れがあることを十二分に理解しているようなつっこみで、守備が手薄になるリスクを取りつつ、どんどん攻撃に参加して手数を増やすことに貢献していた。もう少し早い時間からだったら、完全に流れを掌握できたかもしれない。

佐藤寿人:FW
日本人最多得点は伊達じゃない。入った直後のセットプレーでいきなりジャンピングボレー→こぼれを再度シュート(残念ながらボレーのシーンでファウル)をかましてみせる。ロスタイムに三都主のFKを頭でそらし、GKが弾いたところを再度シュートしてゲット。ほとんどロスタイムくらいの出場時間ながら、持ち味のすばしこさを存分に生かしたプレーを見せつけた。うーん。頼れるFWだなぁ…。

試合後のインタビューで阿部も寿人も「まだまだオシムの考えを体現できてない」という意味のことを言っていたように、まだまだ時間がかかる。千葉もあれだけのチームになるのに3年を要している。いくら日本から選りすぐりの選手を集めているからって、そう簡単にチームができるわけがない。
何より、これから2010年まで眺めていくことがずいぶん楽しみになったことを、改めて確認できた。

*1:はい、全然違いました。腿裏の負傷による交代だそうです。シッタカでスイマセン