清水vs明治大学(BS)

J1チーム対学生。近いところでは市立船橋の快進撃が思い起こされるところだ。upsetがあるから、トーナメントはまた面白い。

このカードが始まってしばらく経つと、「あー、こりゃ波乱があるかもなぁ−」という空気が立ちこめはじめた。清水の選手は明らかになめていた。意識はしていないだろうし、聞いたら「全力でがんばります」とは言っただろうけど、「いつでも押し込める」「いつでも取り返せる」「ちょっと本気出せば…」という空気がにじみ出ていた。プレーの端々にそれが表れていた。あのガンバに快勝したチームとは思えない、気だるい停滞感。ボールをつないでも打開にならない。状況が進展しない。
理由は3つ。まず、パスをしてもその場にとどまる、あるいは追い越していかないのだから、自体が進展するわけがない。次に、ディフェンスが緩慢。先制点が特に象徴的。カウンターをくらっているのにボールホルダーとレシーバーの両方を「眺めている」のだから。いくらなんでもやられるだろう。得点者の林はここまでに3点取ってる「実績」も「自信」もある。そして最後が、明大のがんばり。「がんばり」というと、体力と精神力だけ良かったように見えるので補足。清水の3トップに対して、明大はのDFはライン4…と見えるが、3枚がマンマークをして1枚が必ず余るという古典的な守り方。ただし、これは悪い使いかたではなく、1)近くの相手は必ず捕まえる、2)ボールホルダーには(できるだけ)2枚で寄せる、3)縦の動きがあっても、受け渡さずにそのままついて行く(たとえFWでも、マークしている相手が上がっていったなら、そのまま張り付いて戻って守る)、という、ヒジョーに基本に忠実な、最近のトレンドと言っていい守り方と組み合わせて、堅牢な守備網をしいていた。この状態では、J1とはいえ、緩慢な状態に甘んじているなら、打破できるはずもない。なんとなくだが、日本代表と、アジアの中堅国(タイやオマーンバーレーンあたり)を見ているような気分だった*1。結果は出たけど内容は…というのまで含めて。
というわけで、清水のサッカーに見るべきところはなく(反面教師的な材料は山ほどあったが)、敗れたとはいえ、明大のサッカーは戦術(特に守備戦術と速攻への転じ方など)を考えるのにも、エンターテインメントとしても、とても良い内容だった。それに、リーグ戦だとしたなら*2アウェーで引き分けなんだから上等だった。実のところ、試合が始まった時点では、「泡噴かせることはできても…90分保つんだろうか」という心配があったくらい、最初から運動量勝負の堅実な守備をしていたのだ。過去にも「立ち上がりでビビらせたけど大逆転で沈んだ」という試合はいくつもあった。しかし、地道な走力トレーニングに裏付けられた体力と、リーグ戦で優勝争いをした経験、J2を破ってきた自信がミックスされた上に、若いチーム特有の勢いに推進されて、とても立派な闘い方をしたと思う。そう、逃げて隙を突くサッカーではなく、同等とがっぷり四に組んでのすばらしき敗戦。「プロリーグが始まって15年でここまで底上げされてきたんだなぁ…」という感慨と、「頼むよ、J1だろ?難しいのは分かるけど」という感情が入り交じりつつ、興味深く見入ってしまった。本当に良い試合だった。

*1:もちろん前者は清水で後者は明大

*2:あまり意味のない仮定ではあるけども、こういうことが言いたくなるくらい、立派な健闘だったのだ