「走りの質」と「走る」こと

「走りの質」とは何か。一言で表せるとすれば「走ったことがどれだけチームの勝利や試合内容に還元されているか」だと思う。言うは易し行いは難し。実はシーズンやある大会を通じてやり通すには、非常に難しい課題だったのだ。
「走る」は人間が自力で最も早く移動する手段で、サッカーだけでなく、何かを基準に相手より早く移動しなければならない競技なら必要となる。自分自身を早く動かすことと引き替えに、エネルギーを思い切り食う。ペースを考えなければ、ほぼ 100% バテる。エネルギーが尽きる。
ボールを中心に動くサッカーの場合、必ずボールを追いかけて回ることになる。ボールポゼッショナーになる時間が長ければ、相手を走らせてエネルギーを浪費させることができる。それを意図的に演出できれば、「ここぞ」というときに相手にスキができるのを期待できる。そこで、双方ともずっと同じペースで走り回ることはしない。その解決方法として共通理解や戦術的な決めごとをチームで作っておく必要がある。
サッカーは攻守が連続して切り替わるゲームなので、アウトオブプレーになるまではプレーが続く。しかも、前後半あわせて 90 分以上にも及ぶ。理論上、ボールがアウトオブプレーにならなければ、連続 45 分もボールを気にして動き続けなければならない。実際には 10 分も攻守が連続すれば長いほうだ。この間、持久走のように一定のペースで走っているわけではなく、短いダッシュとゆっくりの移動を繰り返している。ボールに近い場合はダッシュの機会が増え、遠い場合は、次のプレーを予測して先回りのポジショニングをとるためにゆっくりと位置を変えるために歩いて、あるいはジョグで移動する。「走りの質」という観点で見た場合、ダッシュやジョグの関連を注意すべき(工夫すべき、といっても良い)ポイントが発生する。