vs ヨルダン

決勝トーナメント 1 回戦。いつもこの辺で苦しい試合になるんだよなぁ、と思っていたら案の定ひどく大変な試合。ヨルダンは中東の国らしく、フィジカルコンディションが落ちていかない。足が止まらない。日本が苦手とするタイプ。失点シーンは珍しく(この大会初めて?)の、中澤の裏でのヘディング。空中戦はこういう形が失点パターンになるんだろう。…実は得点シーンは間に合わなくて見ておりません。 1-1 の前半 24 分から見てましたので、それからの評価。偏ってるのはいつものことで。

川口能活:GK
失点シーンは仕方ない。出られない場所へ、早いセンタリングで、至近距離のヘディング。GK にはノーチャンスの典型。その代わり、他のシーンでは決定的なピンチを好セーブ連発でしのぐ。そしてなんといっても PK 戦の 3 本ストップ。このデキで文句を言う点などあるだろうか。

加地亮:MF、DF
失点シーンが象徴的。同時に囲みに行った田中誠が転がった後ですんなりかわされ、先制弾につながるセンタリングを上げさせてしまう。この例以外でも、わりと守備が軽い。速攻に対してタッチに逃げるような守備は良いのだけど、取り返す率が低い。誰かが取り返してくれたボールをもらって、空いていれば縦、やることがなければ下げる、みたいなプレーに終始しがち。攻撃時にずいぶん高い位置へ行くようになっていざボールが回るようになったら、パス、ドリブル、センタリング、トラップする・しない、などの判断が悪いし、遅いのが目立ってきた。そして、チャンスに絡んでも生かしていない。何をしても半端でとても不満がある。

田中誠:DF
前戦と同じように加地を追い越してオーバーラップする一方で、相手の早い攻めに対応する。失点シーンは加地と 2 枚で行ったのに振り切られてしまった(転がってしまった)のが痛かった。が、少なくともその後は、これを超える決定的に危ないシーンは無く、きちっとした堅さで対抗。負傷退場するまで、苦しい試合をこらえた。

宮本恒靖:DF
攻め込まれてかなり苦しい試合。こういう試合になるとどうしても気になるのが大きなミス。危ないシーンが数度あった気がする。過去と違うのは、こらえてしのぐ、完全な形でなくても失点しなければ良い、のような、割り切った判断やプレーが見えてきたところ。 PK 戦では、ゴールが変わるという異常事態にも臆することなく抗議をし*1、自身は冷静に決めて見せた。*2

中澤佑二:DF
主審の偏ったジャッジに苦しみながらも、ピンチをことごとくストップ。なにせフィジカルに優れるだけあって、相手がつぶれると正当なチャージでもファウルになっちゃうんだからたまらない。そこでキレずに冷静に対応し続けたのは立派。空中戦、攻撃参加も相変わらずのデキで、レベル高し。

三都主アレサンドロ:MF、DF
コンディション不良。監督だったら次の試合には使わない。特に後半〜延長のパフォーマンスは全くチームに貢献していない。「相手を抜き去らなくてはいけない」みたいに見えるプレーは、いい加減やめて欲しい。パスは仲間にきちんと通れば良い。センタリングはタイミング良く中のシューターに合えば良い。何も、かならずドリブルをするべきではないし、自分が手詰まりになったからってパスをするのも無責任。自分のやりたいことではなく、自分が今すべきことをよく考えた方がいいのではないだろうか。

福西崇史:MF
かなり疲労しているのだろうか。決定的なミスも出て、必ずしも良いデキとは言えなかった。それでも前線へ長いパスを供給したり、相手の早い攻めに食い下がったりと、押し込まれながらもなんとか対抗。バイタルエリアを使われすぎたが、中田浩二が出てきてからは持ち直す。

中村俊輔:MF
キーマンにとして潰される回数が増える。前はこうなると消える時間帯が多かったが、この大会は守備に戻ったり、早めに大きく展開することで日本に余裕を生んだりと、リズムを変え、チャンスを作るきっかけとして機能。再三、絶妙な展開を作るもののフリーキック以外で得点を生むことはできず。PK 失敗はいただけないが、チームとしての結果オーライ。

遠藤保仁:MF
攻守にわたっていつも通りの活躍をしていたが、やっぱり動きは重かった。どうしたってスタミナ勝負になってくるので、中盤の選手には監督が気を遣うべきだろうと思う。交代は遅すぎ。前戦でもすでに調子が良くなかったのだし、そこで休ませてここに備えるべきだったと思う。遠藤自身はよくやっていたのではないだろうか。

玉田圭司:FW
フィジカル勝負で勝ってしまうとファウル、引っ張られてもノーファウルという不公平ぶりに苦しんでいたように見えた。なかなかボックスへ侵入できず、珍しく消えかかった。もう 1 段上のステージの選手になって欲しい。こういう試合で得点の気配が感じられるような、期待できる選手に。

鈴木隆行:FW
棚ボタとはいえゴールを挙げたのはなにより。あきらめずに詰めたのが良かった。らしい泥臭いゴール。が、その後はその苦労が報われず、後半終了のビッグチャンス(中村からのパスをダイビングヘッド)もバーの上を超える。玉田と同じく、競り合いに強いので不公平なジャッジのとばっちりを受けた 1 人。

本山雅志:FW
玉田との交代で後半から投入。三都主が使わない左サイド(皮肉ね)へ流れ、スピードを生かして再三駆け上がる奮闘ぶりを見せる。ボックスへもどんどん進入して気を吐くが、得点には至らず。中村と鈴木の周りを上手く動き回ってボールを受け、リズム良く攻撃に貢献していた。

中田浩二:MF
遠藤と交代で出場。クラブと同じポジションなので、すんなり順応。シンプルなパス交換で攻撃をバックアップするのはいいんだけど、ファイルが多くなったか?前は、もっと「あ、ひっかけちゃった」みたいなのが多かったはずなんだけど、悪役的ファウル(意図的なやつね)が増えた気がする。フィジカルコンタクトも強いし、スピードもあるんだし、余計な小細工無用だと思うんだが。

松田直樹:DF
田中誠の負傷で交代出場。久々の代表戦出場。宮本、中澤とは、今更合う・合わないという間柄でもなくすんなり順応し、短い時間をきっちりこなす。久々だったからか、時間帯が時間帯だったからか、リベロ的な動きではなく、ディフェンスラインに留まってきちっと守備に集中。

というわけで、延長、PK で 7 人づつ蹴っての薄氷の勝利。飛車角金銀落ちくらい(久保、中田、稲本、小野がいない)で、スタメン固定で休みが無くて、ジャッジが相手寄りで、何をしてもブーイングが振ってくるという中でも勝ってしまえる地力と、なんだかよく分からないツキを備えてきている。つまりは、アジアで頭 1 つ抜けたところにあると言っても良いのではないだろうか。理由としては、Jリーグのおかげで選手が増えたことで層が厚くなり、年代別の代表戦やクラブの海外遠征を経験している選手が増えてきたことが大きい。日本は、間違いなく、アジアトップクラスの総合力を備えた国になっているのかもしれない。問題は…ジーコの頑固なところかな。そういう余裕は無かったのかもしれないけど、怪我人と不動のメンバーと考える選手を、前戦で休ませるべきだったと思う(結果論だけど)。
次の相手はバーレーン。苦手な中東勢が続く。せめて、決勝まで進んで、試合数をこなしたいところだ。

*1:NHK の情報によると、レフティに不利だから変えてくれ!と抗議したとのこと。あの後で左利きがまだ控えていることを受けてのことだったようだ。それにしてもそういう要求ができるとは、すごく冷静だ。頼もしいキャプテンになったもんだ…

*2:続報。レフティじゃなくて「キッカーにとってフェアじゃないコンディションだからあっちにしてくれ」と「提案」したらしい。どっちにしろ頼もしいこってす