vs ギリシャ

気温32度という、お世辞にも良いとは言えないコンディションで行われた、コンフェデレーションズカップ第2戦。ざっくりと言ってしまえば、中東〜東南アジアでの試合を消化してきた日本に、気温への対応…というか順応性がアドバンテージになったのかな?という感じの試合。決して良い出来ではないギリシャに対して、ずいぶんと調子を上げたのは良かったと思う。では、個々の評価。
川口能活:GK
かなり調子の良い状態のように見えた。ハイクロスの処理、シュートへの対応、フィード。田中誠とのコミュニケーションミスで大ピンチを招いた以外は、危なげないプレーで安定。
田中誠:DF
珍しく、致命的と言って良いバックパスのミスをした以外は、宮本とセンターを張って守備に貢献。やり方を変えたのか、宮本と左右を変えることもあったようで、運動量は多めだった印象。チェックのスピードや押し上げも良く、上記ミス以外はさして問題はなし。
宮本恒靖:DF
危ない場面を露呈しがちなライン4での出場だったが、コミュニケーションをとってかなり安定したプレーぶり。高さでも簡単に負けることなく、ラインを押し上げ、前でのディフェンスが目立って良かった。ギリシャの攻撃陣が単発的な怖さだった上、後半にガックリと運動量が落ちたとはいえ、このくらいの安定感があればライン4でも計算がたつ。
加地亮:MF
メキシコ戦から持ち越した調子をそのままに、効果的なオーバーラップとボールさばきで攻撃に貢献。守備面でも、自分が抑えるのはもちろん、サポートに急行してボールを逃がす経路を確保するなど、個人的には今までで最高の出来だったのではないかと思う。課題は、センタリングの精度。メキシコ戦のアシストを忘れないでくれ。
三都主アレサンドロ:DF
全体的には「良い三都主」だったが、1試合での調子が安定しないばかりか、つまらない警告を簡単に頂戴する問題児になりつつある。中村俊輔もたまにやるのだが、時間稼ぎというのはFIFAが一番嫌うプレーであり、主審もそのあたりを厳しく見ているのは今に始まったことではない。これだけ簡単に警告を頂戴するようだと、戦力として考えられているという自覚が足らない。
福西崇史:MF
中田がかなり前掛かりだったため、機会を見計らって出て行く場面はあったものの、潰し役と繋ぎ役に軸足を置いたプレーで貢献。CKから惜しいヘッディングを見せるなど、中澤が居ないチームでは、空中戦を勝てる貴重な戦力。世界のDFを相手に得点できるくらいだと、(贅沢だが)すごく頼もしい。
中田英寿:MF
完全復活。ギリシャの運動量が落ちてプレッシャーが消えたとはいえ、後半の動きは圧巻。前半に悪い癖である「キョロキョロしている間にストーキングされているのに気がつかずボールを奪われる」を久々にやってしまった以外は、前半もかなり強力なプレーで気を吐く。試合を通じてのボールの動かし方、ボールタッチ、パス、いずれもが、中田らしいプレーになっていた。
小笠原満男:MF
後半に遠藤と交代で退くも、そこまでのプレーはかなり良かった。問題は「ここぞ」でのプレーの精度。抜けた!と言う場面でボールを変に止めてしまったり、スルーパスが長すぎたり、浮いたボールを途中で引っかけたり。少なくともフィジカルコンタクトにはずいぶん慣れたようで、競り合いでの強さは申し分なくなってきたと見える。あとはチャンスを得点へつなげること。自分が取れれば最高だが、決定的な場面を作る回数を増やすことでも、ずいぶんと日本は楽になる。
中村俊輔:MF
大黒の決勝点をアシストした場面でのボールタッチはらしさが出ていて良かったと思う。それ以外のところでは、相変わらず足下にボールを止めるプレーで削られているのが非常に気に入らない。自分はよけられると思ってるのかもしれないが、相手としたら、最悪、そこでプレーが止まれば良いわけで、フェアにタックルするとは限らない。そのとばっちりで怪我をするかもしれないというのに、分かっていない。それから、後半にプレッシャーが無くなってからのプレーを、厳しいプレッシャーの中でやって欲しい。セリエでの経験が生きていない。
柳沢敦:FW
ここ数試合を見ていて、完全に化けたという印象が強い。攻撃面では、これまで以上にボールを引き出すランニングを繰り返す他、パスよりも強気にシュートを選択する場面が見られるようになった。良い傾向。守備時にも、ファウルを厭わない厳しいチェックできちんと戻る。攻撃は守備をしなくて良いという人もいるが、ゴールに近いところにいるFWが奪い返せることが一番経済的。そして、カウンターの一歩を抑えるという意味でも、FWのタイミングの良いディフェンスは、この試合のように、チームをずいぶん楽にする。
玉田圭司:FW
幾度もあった決定をことごとく外したのは、試合勘が薄れた結果か。動き自体は問題ないのだが、シュートの精度が怪しい。アジア杯での決定力が嘘のよう。とにかくシュート精度を上げていかないと、これから先は無い。厳しいようだが、柳沢と大黒の調子が良いだけに、鈴木のようにベンチに下がることになりかねない。この試合は絶好のアピールの機会だっただけにもったいない。
大黒将志:FW
玉田と交代で出場。まずは決勝点をマークしたことで文句なし。途中出場のFWが求められるプレー−シュートを積極的にうち、精力的にボールを追いかける−を当たり前のように行うのはいつも通り。確実に流れを変えられる、中山(磐田)の正当後継者(?)。得点だけに注目がいきがちだが、この人はボールタッチも良い上にパスも巧いので、ボールが収まって、展開が安定することで流れが変わるのではないかと思う。
遠藤保仁:MF
小笠原と交代で出場。時間は短かったが、難しい試合展開の中でリズムを壊すことなくきっちりと仕事をこなす。もう少し長くプレーしているところを見たい気もする。大黒とセットで先発させて欲しい。ジーコのことだから、この2人のホットラインは知らないだろうけど…。
中田浩二:MF
ほとんどロスタイムだけの時間に中村と交代で出場。CKでのチャンスに決定的なシュートを放つも、相手DFにブロックされて追加点ならず。この人も中澤不在の代表では、セットプレーで計算できる戦力の1人かもしれない。時間が短すぎて評価は不可能。
ほとんどアウェーと言って良い雰囲気の中で、見事、欧州覇者に競り勝っての1勝。予選突破の望みを繋いだが、メキシコの結果もあるし、ブラジルに勝つという条件が求められる。可能性はゼロではないしマイアミのこともあるので、最初から腰の引けた状態ではないとは思うものの、かなりの難敵であるという事実の前に異論がある人は、まずいないだろう。