スペインvsウクライナ(BS)

W杯優勝経験もないのにマスコミが「無敵艦隊」の活字を踊らせるスペインと、ようやく本大会出場を果たしたウクライナ。予選の成績だけから予想するなら、ウクライナの方が上。もちろん、こんなものは全くあてにならない。スペインが実力のあるチームだからではなく、やってみなくてはわからない、というものだから。(かと言って日本の状況を楽観するほど楽天家でもないんだが…)

立ち上がりからガンガン仕掛けるのは、他の強豪国と一緒。このパターン、今大会のトレンドなんだろうか?様子見をせず、立ち上がりからフルパワーで押し込む。シャビとシャビ・アロンソが組み立て、ビジャがキーとなって、タイミングよく飛び出し、ルイス・ガルシアフェルナンド・トーレスが絡んでいく迫力ある攻撃が、切れ目無く続く。先制点はブラジルから帰化したディフェンシブハーフのセナ
が放ったミドルシュートから。GKに弾かれてCKを獲得すると、前半5分のCKとさほど変わらない位置へシャビが早めのボールを入れる。なだれ込むようにフェルナンド・トーレスが身体を投げ出して押し込んだ。そのまま、どうにも落ち着かないウクライナを攻め続け、ゴール前で得たFKをビジャが蹴る。壁に当たったボールがGKの逆をついて2点目。得点はセットプレーからだが、2分30秒からのシーンがこの日のスペインを象徴していた。左サイドで得たFKをすぐにスタート。シャビからボールを受けたビジャが中へドリブルし、ルイス・ガルシアの空けたコースを通してフェルナンド・トーレスへグラウンダーでサイドチェンジ。右目に開いた位置で一旦ペースを落とし、オーバーラップしたセルヒオ・ラモスへスルーパスセルヒオ・ラモスは、少し突っかけてからマイナスへグラウンダーのセンタリング。ゴール前に突っ込んでいたビジャが反転してきたのとかぶってしまったが、後ろから走り込んだシャビがダイレクトでシュートを放つ。惜しくも得点にはならなかったが、わずか15秒で完成した美しい攻撃だった。2点のリードを得たスペインは余裕を持ってボールを回し、ウクライナの攻撃を受け止める。カウンターが得意なウクライナに対し、あくまでも中盤勝負に持ち込んだのことが、この試合の流れを決定付けたと思う。
ウクライナは、スペインの軽快なボール回しに手こずって攻撃スピードを削ぐことができず、散発的に前方へ進むことはあれど、ずーっと押し込まるような状態。押し込まれるならカウンターが効きそうなのだが、不幸なことに、ウクライナオフサイドを見る、スペインサイドタッチラインを走る副審がオフサイドの判定に厳しい人で、ギリギリオフサイドではない、あるいは人によっては流すこともありそうなタイミングが、ことごとくファウルになる。何より問題なのは、取り返せてもパスの精度が良くない。上でも書いたが、中盤の攻防に引きずり込まれたことでスピードのある攻撃が封じられてしまっているため、特に前線でボールを受けたいシェフチェンコが、マーカーを引きはがせずにイライラしているのがうかがえた。残念ながら、シャビ級のパサーがウクライナの中盤にいるわけではないので、ミランで見せるような鼻っ面でパスを受けて切れ込んでいくようなプレーは全く無し。やや事故のような先制を許してから、徐々に若さが出てしまい、無理なタックルから2点目となるFKを献上してしまう。この辺り、経験の差かな…という感じがした。ややおどおどしてるように見えた。国際舞台の経験があるとはいえ若いチームでは、さすがにいきなり2点差になると難しいものがあるようだ。
残念ながらハーフタイムでこの劣勢を切り替えることができなかったようで、後半2分にはDFのワシツクがPKを献上した上に2枚目のイエローカードを受けて退場。ビジャがきっちり沈めて勝負あったり。圧倒的にボールポゼッションを続けるスペインから、1人減ったウクライナがボールを取り返すのは至難の業。そして後半36分には、プジョルインターセプトが基点となって4点目。オーバーラップしたプジョルがルーレットで一人交わして(!)、フェルナンド・トーレスに当て、さらに前方へ。フェルナンド・トーレスは、DFに身体を当てられてバランスを崩しながらもつま先でセナにつなぐ。セナが上がっていたプジョルにダイレクトで浮き球を送り、ヘディングで落とされたボールを走り込んだフェルナンド・トーレスがダイレクトで叩き込んだ。前半立ち上がりに見せた流れるようなパスワークにも劣らない、きれいな展開だった。これがとどめとなって試合終了。後半10分にビジャ→ラウルとシャビ・アロンソアルベルダという交代はあったが、ラウルが元気だったな、というのがわかったくらいで、あまり体勢に影響なし。イングランド同様、エース不在でもしっかり主導権を握って勝つあたり、今回のスペインはひと味違うのかもしれない。