オランダvsセルビア・モンテネグロ(BS)

日本戦の前に見たのだけど、なんとなくそわそわ見てたせいか詳細に何か言えるほどの見方をしていなかったので復習。気になったことがある。それは、なんで途中からセルビア・モンテネグロが押し返せたか?というところ。
先に得点シーンについて記しておくと、先制点にして決勝点は前半に生まれた。最終ライン際で奪い返されたボールは、1人(ファン・ボメルかな?)を経由してからゆるい山なりの縦パスでファン・ペルシーへ。ファン・ペルシーは、ターンしながらワンタッチでディフェンスラインの裏へ、同じような軌道の、しかし、コントロールしやすい更に小さな山なりのラストパスとしてロッベンの足下へ送りこむ。鋭く反応したロッベンは、オフサイドギリギリで抜け出し、スピードを生かしたドリブルでDFを引きずりながらもGKの脇を抜いてきっちり流し込む。高速ドリブルという自分の持ち味を生かしたロッベンはもちろんだが、難しいタイミングで正確なラストパスを供給したファン・ペルシーの技術も間違いなく非凡なものだった。この試合はロッベンが活躍したという意見が多いが、個人的にはファン・ペルシーのコンダクターぶりもかなりの貢献度があったと言っておきたい。
ここまでの時間で、セルビア・モンテネグロが、割と長いパスでもかまわずに裏をついていたのとは対照的に、あるところまではワンタッチで丁寧にボールを動かして中盤を作っていたオランダだからこそ、いきなりその中盤をすっ飛ばす長めのパスが効いたという場面でもある。やっぱりメリハリのあるプレーはシンプルでもとっさに効くなぁ…。布石は必要です。
ロッベンは気持ちがのってくると調子が出るタイプのようで、気分良く進出しながらオランダの攻撃をリードする。マークが厳しいとはいえ、本来なら核になるであろうファン・ニステルローイがかすんでいるのだから、たいしたもんだと思う。(後半でカイトと交代しちゃうしね)
余談だが、以前、交代を告げられて、明らかにガッカリして肩を落としながらベンチに下がったのを見たことがあるが、恐らく、かなりの気分屋さんだと思う。W杯に来て、初戦で、先制点。アタッカーにとってこんなに気分の良いことはないからなぁ。

で、ゴール以外の前半の展開というと…。オランダの集中守備とワンタッチ、ツータッチの軽快なボール回しに、セルビア・モンテネグロが手こずって、セカンドボールも拾えずに守勢に回るという図。それでも、流れが変わらないながら、12分、22分、27分に左サイドからセンタリング、14分には高い位置からの奪取でシュート、26分にゴール前ペナルティエリア外でFK、30分にはGK正面へミドルシュートなどなど、数多く攻め込めるのだから、セルビア・モンテネグロは決して弱くない。
録画を見直してセルビア・モンテネグロがオランダを捕まえきれない理由が分かった。最終ラインに至るまで、ボールの競り合いにならない限りゾーンで守っているのが原因のようだ。つまり、張り付かれているわけではないので、プレッシャーが飛んでくるまでに少し時間がある。オランダは、ボールが動くとポジションを微調整する(ブラジルのように)ため、気がつくと位置関係がガラッと変わっている。ポジショニングが変わるからこそゾーンディフェンスが効く…と思いがちだが、つなぎのパスはスペースに出すわけではないので、レシーバーになりえる選手にある程度張り付かないと、良いようにボールを回されてしまう。しかもオランダはグラウンドを広く使うように人がばらけている。これではボールを奪取するのはちょっと難しいよなぁ…。ケジュマン、ミロシェビッチとタレントはそれなりにいるんだけど、あいにくサッカーはボールがあってなんぼ。アタッカーは特に、ボールがあってなんぼ。ボールがなければ只の人以下。その辺歩いてる未経験者を連れてきても大差ない。結局、この状況が改善されたのは後半になってからだった。
後半頭から190cmオーバーの長身FWジキッチが投入されたことでセルビア・モンテネグロに明確なターゲットができる。相変わらず、自ゴール前までがゾーンディフェンスなのだが、ボールを保持してからのやり方に変化が起きた。縦パスを入れる回数が減り、彼らなら当たり前のように出来るはずの中盤の組み立て(パスで運ぶ)を混ぜるようになったのだ。つまり、前半は左サイドを中心に1発で裏を取るようなロングパスを多用していたのに対し、きちっとボールを持ち、つなぎ、運ぶ場面が増えてきた。ジキッチを入れたことと相反するようだが実は理にかなってる。高いFWが入ればターゲットになることを警戒される。となれば、「いつそこへ突っ込むか」を悟られないように、ボールを持った際のプレーの選択肢を増やして絞りにくくすれば良い。前半から左サイドの裏を狙っていたことに加えて、ジキッチの頭、そして近所の味方にパス。リアルタイム進行の中で3択を絞るのは辛いぞ。マジで。
こうして、徐々にペースをつかんだセルビア・モンテネグロは、後半25分過ぎには完全に試合の流れを中庸に押し戻すことに成功している。確かに攻め込まれる回数はあんまり変わらないが、チャンスは確実に増えていた。こういうのを「サッカーを知ってる」と言うんだろう。
というわけで、結局、自分たちに合っている守備の方法を採用して守れば良いわけで、試合の流れを決定づけるのは守備の仕方云々よりもボールの持ち方、ボールをどれくらい大事にしているか(過保護でもダメ。流れが悪くなるし、リズムが作れない)というのが問題なのだということだ。確かにポゼッションしていれば、攻められることはないし。ロングボールよりショートレンジのパスで回す方がリスクも小さいし。チェコとやったときもそうだが、オランダがらみの試合は良い試合が多い。きっと、ボールポゼッションをすることが主眼になりがちだからだろう。キック&ラッシュも豪快で良いけど、やっぱり、丁寧にボールを運ぶ試合が見たい。というか、こういう試合がたくさん見たいもんです。なんだかまとまりが無い感じだが、思いついたことをツラツラと。