ガーナvsチェコ(BS)

イタリア相手に無得点で敗れたガーナと、「順当」にアメリカを破ったチェコ。普通に考えればチェコの勝ちはあんまり疑う余地はなかったのだけど…。
チェコは、負傷でコレルとバロシュを欠くものの、ロクベンツをセンターに据え、ベドヴェド、ロシツキーポボルスキーらが前線に絡んでいく、おなじみの形。が、やはり…というべきか、コレルとロクベンツの差はいかんともしがたく、縦に当てた後の迫力ある押し上げがなかなか機能しない。チェコらしい流れが見えるのは、アウトサイドにあたったときか、ネドヴェドロシツキーが持ってあがった場合の方が多かった。逆にセンターにあたったときはガーナの強力な守備に跳ね返されて、カウンターを食う。前半はこのガーナの守備に手こずり、ほとんど良いところが無かった。後半になって、スタイネル、シオンコが投入されてから「らしさ」が出て、鋭いカウンターを中心にゴールを脅かすも、集中力・体力の落ちないガーナのしつこい守備を振り切れず、ウィファルシを退場で失い、追加点を許して敗れた。結果を先に知ってしまっていたので、何が悪かったのかを探しながら見ていたが、しいて言えば、やはりコレルの不在が響いたという感じ。それよりもガーナが良すぎた。深い位置から持ち上がるロシツキーではなく、より前線で核になるネドヴェド、右から基点になるポボルスキーが徹底的に封じられ、リズムをつかむのが遅かった。また、35分頃からパッタリを足が止まり、そこを突かれたのも痛かった。この試合に限って言えば、ガーナの方が力があったということかもしれない。
一方のガーナも、クフォーらレギュラークラスを数人欠く布陣ながら、アッピアームンタリらは健在。初めてまともに見たのだけど、とても良いサッカーをする。特筆すべき点は、縦のポジションチェンジを見逃さず、前線からすばやく囲い込む守備の堅さと、個々のボールの持ち方、パスとドリブルの選択の的確さ、そして、3人以上の集団戦術の徹底振り。2002年にセネガルを見たときは、そのモダンな内容に驚いたが、組織守備の素晴らしさと、攻撃になるととたんに変幻自在な攻めという、コントラストが印象的だった。このガーナは、それに比べると、守備は組織戦術はある(囲い込みが上手い)ものの、最終局面では個々が現場判断と高い技術でしのぎ、攻撃時は個人技とパスワークを使い分けながらサポートが多い状態でゴールへ一気に迫る、南米っぽい、見慣れた「正統派」なサッカーをする。ガーナについてはほとんど知らなかったが、各選手の経歴、アフリカでの実績を見れば、やはりこのグループEが本当の死のグループだったと、改めて思うし、結果も想像範囲の外ではない。立ち上がりにCKから先制点をとってリズムに乗ると、イマイチ、ロクベンツからの展開がよくないチェコを尻目に、慌てず、あせらず、淡々とサッカーをする。先に書いた守備の堅さは、特に縦に入れ替わる選手をきちっと追い続けるというしつこさがキーポイント。普通のチームだと、追い越して上がる選手をつかまえながら下がって守備するということがなかなか難しいが、ガーナは、目の前の事件に集中して、FWだろうがMFだろうが、危ないところへ侵入する選手を追い続ける。このしつこさが、右サイドのポボルスキーや、ネドヴェドロシツキーを押さえ込めた理由ではないかと思う。そして攻撃のスピード。もともとスピードのある選手が多いように見えたが、ボールの動かし方が良い。一言で言えばモダン。詳しく言えば、パスを出すタイミングも良いが、ボールを放した選手がサポートする位置が良く、ボールを動かすスピードが早い。また、個人が強くて技術があるので、パスがショートしそうな場面でもたくみに身体を入れ替えてつないでいける。守備時は深いタックルに象徴されるように、身体能力の高さを発揮しているシーンが目立ったが、それでも、忠実に人を追う、囲い込むという原則を守り、攻撃では間違いなく技術の高さが光っていた。次の試合でもこれと同等のゲームができれば、決勝トーナメントが見えてくるはず。ただ、出場停止選手が出てきたので、どうなるか。