メキシコvsポルトガル(BS)

決勝トーナメントを決めたポルトガルと、引き分け以上なら自力突破の望みがあるメキシコの試合。ポルトガルクリスティアーノ・ロナウドやデコら、主力の数人を休ませる1.5軍的メンバー。
一方、突破を確実にしたいメキシコは、DFマルケスを最終ラインではなく前目において攻撃的に挑む。結果論だが、これがメキシコを苦しませることとなった。
先制点はポルトガル。カウンターで左サイドを駆け上がったシモン・サブローサが3人を引きつけ、センタリングというより、早いスクエアのパス。走り込んだマニシェが丁寧にシュート。あっという間に先制点を許したメキシコは、攻め手を緩めずにガンガンプレッシャーを飛ばすが、CKの競り合いでマルケスがハンドを取られてPKを献上。1点目をアシストしたシモン・サブローサがきっちり決める。中南米のチームはこういう「大ピンチを招く余計なファウル」をすることがある。それも、理解不可能な、場所と時間帯で。今回も「なんでかなー…」という典型的なミスだった。
メキシコの焦りにも似た荒いプレーと小競り合いが続き、ポルトガル優勢の様子で流れていくかと思いきや、2点目の失点からわずか4分でCKから1点を返す。この試合先発起用となったフォンセカが遠目の位置から頭で合わせ、たたきつけられたボールはゴールの右隅に弾んで吸い込まれた。このあきれるくらいの勝負強さはなんなんだろう。決してポルトガルは手を抜いていないのに。さきほどのハンドがますます不可解だ。前半はこのまま終了。
後半、最終ラインにマルケスを戻すと、メキシコの守備が安定する。しかしポルトガルの中盤での集中守備は固く、メキシコはボールを拾いながらも、なかなか前進できない。高度なテクニックに裏打ちされたパスワーク応酬。無理をせず、空きを狙って素早く回す。対照的に、チャンスと見るや削るのも厭わない激しいプレッシング。キープが続いても良いポルトガルと、早く1点を返したいメキシコのボールの回し方が全く異なるのも見物。ポルトガルは、とにかくトライアングルを基本にくるくるとボールを回す。最終ラインを超えてGKまで戻すのこともある。余裕を持ちつつ隙を狙う感じ。メキシコは、前半よりも縦への意識が高く、少ないタッチで前へ送り、アーリークロスやくさびのパスが増える。特にゴール前へのなだれ込みは迫力がある。
そして後半12分。メキシコに最大の決定機が訪れる。メキシコのしつこい攻撃の中、ペレスのキックフェイント→切り返しにひっかかったミゲルが、たまらずペナルティエリア内でファウルし、PKを献上。ところが、これをMFブラボーが外してしまう。後半立ち上がりとはいえ、かなりガックリ来ても良いが、ここで崩れないのがメキシコの強さ。PK失敗前と変わることのない試合運びでゴールを狙う。と、ペースを落とさずに良いリズムをつかんできたと思った後半16分。ペレスがシミュレーションを取られ、2度目の警告で退場。またもや窮地に立つメキシコ。ポルトガルはこの瞬間、ミゲルにかえてパウロペレイラを投入。ミゲルはやられすぎていたので、良い判断だと思う。守りきる、ということではないが、ポルトガルとしては普通にこのまま互角にすぎれば良いわけで、ミゲルのようにチャンスを与えすぎるのは良くない。
1人失ったメキシコは、下がることなく攻撃を続け、ペレスの退場劇のわずか2分後には再びの決定機をまたもブラボーが外してしまう。今日は残念ながら彼の日ではなかった。
数的優位を保てるはずのポルトガルは隙あらば攻めるものの、メキシコを押しつぶすまでは至らず、逆にメキシコの大健闘を演出する引き立て役に甘んじてしまった。名より実を取ればいいとは言うものの、サブメンバーの出来はフェリポンにとっては、やや悩ましいことだろう。
結局、イランとアンゴラが引き分けたため、かろうじてメキシコは突破を果たしたものの、退場者を出したので諸手を挙げては喜べない。とはいえ、10人になっても運動量が落ちず戦い抜いたメキシコと、MVPとなったフォンセカには賞賛の拍手を送りたい*1
この両チームが対戦すると、こんなにもサッカーが「パスゲーム」だということがハッキリ分かるのかと驚いた。ロングボールはごくたまに。それ以外はショートパスとドリブルで開いてを崩しにかかる。そしてあきらめないメキシコのスピリット。東アジアのだらしない某国にはホントに見習ってほしいものだ。

*1:敗れたチームから初めてMVPが選ばれたというニュースを読んだ。FIFAのTSG(Tecnical Stady Group)もイキなことをする