浦和vsFC東京(BS)

浦和にとっては苦手な東京との一戦。代表に7人招集されたとはいえ、それが結果につながるほど甘くないんだけどね。
と、見始めたら、なんだか知らんが小野がキレキレだったので、ここからメモをしておく。そうそう。こういうプレーを見たかったんですよ、というプレーを連発。つまり、
・最前線へ飛び込んでいく
・少ないタッチで広い方へ展開する
・足を止めないキープでためを作る
ということ。足が特別に速いわけでなく、フィジカルコンタクトが抜群に強いわけでなく、上背があるわけでもなく、無尽蔵と賞されるほどスタミナがあるわけでもない。その代わりに、世界でも十分に通用するボールコントロール技術がある。トラップ、パス、シュート。となれば、小野が求められることは、前線の密集地帯でパスを受け、「ハブ」として機能しつつ得点を狙うこと。そしてカウンター時には、味方が拾ったボールを受けて、一番良いところへ高速で送り込む起点となること。
かつてある解説者が「小野はボランチ」と言ったことがあったけど、これは真っ向から否定する。繰り返しになるが、あの技術は、人の多くなるバイタルエリアペナルティエリア付近で、ものすごく時間と空間がない場所でこそ生きる。それは、一瞬のコントロールやワンタッチプレーによって、急所をえぐることこそ、小野を小野らしく機能させる、小野らしさの要因だ。
そういう意味では、この試合の先制点は、小野がすべき仕事を行った結果だと言える。右サイドを駆け上がる平川を見つつ、中に入る達也との距離を測り、逆サイドをスルスルと上がる。センタリングがあがり、達也の頭をかすめてこぼれてきたボールを胸で押さえてボレー*1。久しぶりにこんなプレーを見た。ディフェンシブハーフとして底を固めるのも良いが、ポジショニングに縛られるばかりで、こういう思い切りの良いプレーが完全に消えていたからなぁ。

もう1人。良い意味でおかしいヤツがいた。三都主だ。この前の代表戦でも2得点、この試合でも2得点。おかしい。何があったんだろう?つーか、ピークが間違ってる。2ヶ月遅いだろ、オマエ…と思ったが、三都主自身は、W杯からずーっと好調なんだよな。スンマセン。
で、大きく変わったことと言えば、プレーエリアが広がったことだと思う。以前は、自分の前のスペースへ走り込むプレーすらしなかった、足元勝負だけのドリブラータイプのウィングだった。それが、徐々に前のスペースに走り込んでパスを受けるようになり、サイドバックをやらされてから守備を学び、縦に走る距離がずっと長くなった。そして、前の代表戦とこの試合では、自分たちがボールポゼッションしている際に、バイタルエリアが空いていることを、どこかでチェックする習慣が結実しているのだろう。それは間違いないと思う。その結果が、代表戦の長い距離を走った2点目と、この試合での2点目だ。以前は、どこかアウトサイドで「よろしくなー」という感じのプレーが多かったから、こういう中へ飛び込むプレーはほとんど印象にない。持った位置がゴールに近いなど、条件があったときにミドルシュートを放つことはあった。比較対象のレベルが高いが、ベッカムと似たような進化をしていると感じる。ベッカムも、当初はアウトサイドに張り付く、ちょっと良いクロッサーだった。それが、レアルで不慣れなボランチを経験し、センターでのプレー感覚と守備意識を得て、アウトサイドに戻ったときには、隙あらばセンターを抉りにくる、アウトサイドを起点とするアタッカーへと変貌した。ともあれ、三都主も開眼しているというのは、良いことだ。

試合内容は、浦和が終始圧倒。途中、FC東京の伊野波が2度目の警告で退場を受けると、完全に浦和ペース。FC東京は、悪くはないのだけど、中盤で圧倒的に負けていた感じがする。浦和は中盤から前線が強いチームなのに、それが止められないのだから、仕方ない。特に、本来のリズムを取り戻した小野、調子が上がらないながら忠実にプレーする長谷部、後半終盤にも前線まで駆け上がる鈴木啓などを上回ることができない。それゆえに、攻撃は縦に急ぐ単調なものとなり、石川などの良いアタッカーも生きない。1人減ってしまうのも、結局は、この試合での守備が上手く機能していないことを示しているものだ。ガーロがどこを焦点にしてチームを組んでいるかはよく知らないが、どこで攻撃を押さえるかという約束事が、チームに浸透していない気がした。正直、この程度のFC東京に勝っても、あんまりうれしくない。以前の大胆な攻撃的精神はどこへ行ってしまったんだろう?極端にメンバーが替わっていないというのになぁ…。それとも、今野ってのは、かなり強大な影響力を持つ選手になってるのかなぁ。

というわけで、試合というより、良かった人に主に焦点を当ててみた。圧勝した試合の総括なんてのは、あんまり意味がないと思ってるからなぁ。

*1:胸トラップってのは間違い。スポーツニュースで見たらモモでのトラップだった