闘える面子と守備のスペシャリストの不足

前段からの推測で「技術や戦術眼などの能力面での『期待』」で選抜したとさえ思われるメンバーは、当然、実戦では物足りなくなる場面が出てくる。簡単に言うと 2 点。 1 つは、強い意志で、臆することなく戦えるメンバー、窮地に立ったとき、自分たちで奮い立たせることができる人間の不足。そして、絶対的に得意なポジションを持つスペシャリストの不足。
前者は、闘莉王や茂庭でさえ甘い面を見せてしまったのだから、もともと負けん気の強さを表へ出して「闘える」大久保や田中達以外、他の選手らの大人しさは言及すべくも無い。小野にしても、仲間を怒鳴ったり鼓舞したりするより、審判にクレームをつける姿の方が印象に残っている。象徴的なのは、ディフェンスリーダーを務めてもいいくらいの那須の戦意喪失と、当たりの激しい相手にオロオロしているようにさえ見えた守備の軽い阿部。怒鳴り散らして高揚させていい場面でもどこか遠慮しているかのような曽ヶ端みたいな細かい例をまでいくとキリが無いほど。全体としてみて、気迫とか闘志とか、強烈な意識がほとばしるような選手が居ない。闘莉王が怒鳴っても、それがスルーしていってしまうような気抜けぶり。厳しいようだが、画面からはそう見えたのだから仕方無い。
後者は A 代表が参考になる。クラブと違うポジションをやっているのは基本的に、 4 バックを敷いたときの三都主(左サイドハーフ→左サイドバック)くらい。五輪代表は阿部、徳永、駒野、小野、森崎が複数の位置で起用される。やはり選抜時に気になっていた、今野の相方となるディフェンシブハーフの不在に代表されるように、点を取るための策は考えていた反面、強力な攻撃力を持つパラグアイやイタリアに対抗する守備力がおろそかになっていると思える。特に、人に強いメンバーが足らない。 A 代表の守備陣は福西、遠藤のディフェンシブハーフ田中誠、中沢のダブルストッパーにスイーパー的な宮本。バックアップは中田浩と松田。両サイドは人に強い人材が居なかったが、真中はしっかりと固めている。一方の五輪代表は今野と阿部のディフェンシブハーフと、茂庭、闘莉王那須のフラットラインが基本。バックアップは森崎、小野、徳永、阿部。
そして偶然かもしれないが、 A 代表の守備陣は他の選手(主に控え選手)がバックアップなのに対して、複数ポジションができる選手(レギュラークラス)がバックアップとなっている。結論として、層が厚いのはアタッカーで守備は人材が足らない。なんとか組織力というものでこらえてきた。そんな五輪代表の姿が見えてくる。